清盛
「一介の武士にすぎなかった清盛が、いかにして太政大臣にまで昇りつめ、歴史を動かすに至ったのか。その人物像を具体的なイメージとして描きたいというのが、この作品を書こうと思い立った動機である。この作品は小説のようなスタイルとなっているけれども、なるべく史料に沿って歴史的な事実を再現し、政治的なメカニズムが読者に伝わるように配慮した。従って完全なフィクションではなく、評伝といっていいものになっている。」(文庫版あとがきより)
大河ドラマの予習はしたいがネタバレするから原作は読みたくない。別の小説で清盛について理解を深めたいという人におすすめ。芥川賞作家 三田 誠広が2000年に史料重視で書きあげた作品。権謀術数で入り乱れる多数の登場人物たち、めまぐるしく変転する政治状況を、長編歴史小説にまとめた。人物の内面を描くことは重視されていないが、かなり正確に人間関係や事実関係が反映されている。院政や摂関政治とはそもそも何かという知識も自然に頭に入るように書かれている。
清盛の時代、頂点であるはずの天皇は名ばかりで、天皇の母方の祖父の関白、天皇の実の父の上皇、武家の長である清盛らの駆け引きで政治は動かされている。彼らが頼りとする陰陽道の学者や寵愛を受ける女御たちも大きな影響力を持っていた。
日本という国は昔からひとりの独裁者というのを許さない国だったのだなと思った。アレキサンダーとかナポレオンとかチンギスハーンみたいな強すぎる独裁者は出てこない、調整能力と集団意思決定が好きな国なのだ。そんな複雑な人間関係の力学の中で、天皇の御落胤かもしれない自身の出自を巧妙に使ってセルフブランディングして、権力の階段を登りつめていったのが清盛であったようだ。
・平清盛 -栄華と退廃の平安を往く-
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/12/post-1565.html
・平家の群像 物語から史実へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/10/post-1533.html
・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html
・安徳天皇漂海記
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/09/post-445.html
平家物語のバリエーション。
・琵琶法師―"異界"を語る人びと
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1034.html
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