ユリゴコロ
余命幾ばくもない父だけが残った実家で、息子の亮介は誰が書いたのかわからない古いノートをみつける。「ユリゴコロ」と名づけられたノートには、一人称で猟奇殺人の記録がびっしりと綴られていた。なぜ父はこんなノートを隠し持っているのか。これは誰が書いたものなのか。ここに書かれているのは事実なのか。亮介は4冊にわたる内容を読み進めるうちに、忌まわしい家族の秘密を知ってしまう。
心の闇を抱えた子供時代から次第に邪悪な猟奇殺人鬼へと変化していく手記「ユリゴコロ」ノートが、読者を暗い闇に吸い込む。家族の狂気は自分にも宿る。倫理も法律も超越した絶対的な愛。亮介は裁けない罪があることを知る。この劇中劇だけでもかなりミステリとして高評価に値するが、さらに亮介の現実と内容がリンクしていき、後半で物語は予測不能な展開を見せる。
最初から最後まで不穏な緊張感が持続する。ミステリとしての驚かせる仕掛けも成功している。間延びすることなく一気に読めた。系統としては湊 かなえ『告白』みたいなかんじといえるか。映画化しても面白いかもしれない。
・猫鳴り
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1373.html
こちらも沼田 まほかる。作品。
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