スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―

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・スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
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国際的なマーケティングコミュニケーション企業のヤング&ビルカムが、17年間で120万人以上を対象に継続実施してきた「ブランド・アセット・バリェエーター」(BAV)という調査がある。50カ国4万を超えるブランドイメージについて四半期ごとの購買・消費者意識アンケートを行うものだ。

著者はBAVの分析もとに、リーマンショック後の、世界の消費者心理と購買行動に大きな変化があったと結論する。危機を乗り越えた消費者たちは、まるで御札が投票用紙であるかのように、絆や夢や未来のために、消費活動を行うようになった。社会をよくするための選択としての消費へのシフト。それが本書のタイトル「スペンドシフト」だ。

この本で紹介されるデータ的には「富裕層向け」「お高くとまった」「感性に訴える」「大胆な」「トレンディ」だったかつての人気ブランドへの評価が下降して、代わりに「親切で思いやりのある」「親しみのある」「高品質の」「社会的責任のある」「リーダー」といったイメージを持つブランドが高く評価されている。

物質主義から精神性や社会性の追求がはじまった。消費者の価値観は「不屈の精神」「発明・工夫」「しなやかな生き方」「協力型消費」「モノ重視から実質重視へ」。じっくり考えるソクラテス流の消費の時代。自分の理念に合うかどうかを基準にしてブランドを選ぶ時代。さまざまな調査の数字がそうした新しい時代精神を示している。

クチコミによる評判を重んじ、良き企業市民であること、地域社会や従業員を大切にする企業が愛される。コミュニティづくりと親和性の高いブランドは主要指標のすべてにおいて他のブランドを上回っている。ソーシャルメディアが「顔の見える」企業をつくるための有効なツールになる。

「次の選挙を待つまでもなく、消費が新しい傾向を示す背景には価値観の変化があるとわかるはずだ。アメリカは借金による消費やモノの過剰と決別して、節約と投資へと向かっている。わが国のGDP(国内総生産)の三分の二は消費支出によって支えられている。つまり、消費の風向きは、文化と経済の両方に変化を及ぼしているのだ。わたしたちは、消費しない社会に向かっているわけではなく、消費のもたらす変化をとおして社会をよい方向へ導こうとしている。」

ここに取り上げられるデータは欧米のものが多いのだが、日本でも3.11以降、コミュニティ、絆、未来の共創が大きなテーマとなった。2011年がスペンドシフト元年と言っていいかもしれない。

消費者が何を買うか、何を買わないかで、社会を変えていく。マーケティングの役割が大きく変わるということでもある。視野を広く、志を高く持たないと、マーケッターという仕事はつとまらない時代になった。

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このページは、daiyaが2011年12月 6日 23:59に書いたブログ記事です。

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