遠い町から来た話
文字がない大人の絵本の大傑作『アライバル』のショーン・タン最新作。
今回は長文のテキストとイラストの短編集だ。
町のはずれに住んでいて人間が相談すると向かうべき道をおおざっぱに指し示してくれる水牛の話。異次元から来た影絵の小人のような姿をした交換留学生のホームステイの話。町をうろつく潜水服の男の話。みんなが書いて読まれずに終わった詩の言葉が集まって、雪だるまのようにふくらんでいく話。家の庭に突然巨大なジュゴンが寝転がっていた話。家の屋根裏が別世界の中庭とつながっている話。どこかで当たり前のように異世界とつながっている日常を描く幻想譚。
一番印象深かったのは『棒人間たち』。町のそこかしこにいるけれど大人は気にとめない謎の生物 棒人間。こどもたちは正体不明の存在が気になって、いたずらしたり壊したり。人はふと「何の理由があってここにいるのだろう?」と棒人間をみつめるが、実は棒人間たちだって人間に対して同じ問いかけをしたいのではないか?という考察で終わる。
ショーン・タンは中国系マレーシア人の父とアイルランド・イギリス系移民3世の母を持つ1974年生まれのオーストラリア人。前作『アライバル』と同様に異文化体験、多様性と包摂の本質を語っている作品が特に素晴らしいなと思う。
額に入れて飾りたい絵が素晴らしいが、岸本佐知子氏の翻訳による名文も光っている。
・アライバル
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/post-1499.html
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