なまづま
日本中に繁殖した激臭を放つ粘液状生物ヌメリヒトモドキ。下等生物のようにみえるが、人間の感情や記憶を学習する能力があることがわかってきた。適切に情報を与えると、ドロドロの生臭い粘液が、人間のようにふるまうことがあるのだ。国の秘密研究所に勤務する主人公は、自宅浴室に密かにヌメリヒトモドキを閉じ込めた。死んだ妻の髪を餌として与え、思い出の日記を読み聞かせる。何度かの"融合"を繰り返しながら、異形のヌメリヒトモドキは、最愛の妻のイメージに近づいていく。
生臭くてヌルヌルでドロドロで低レベルの知能。五感フル稼働で生理的嫌悪感を誘うヌメリヒトモドキの不気味な生態がユニークだ。極度に内向的な主人公の心理描写が、共同生活をすすめるにつれて、不穏にテンションを高めていき、どんなカタストロフに落ちていくのかと飽きさせない。
第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作である。同賞受賞系では『姉飼』『粘膜人間』と同じ系統だ。この作品もまたおぞましい。グロテスク。不気味。残忍。悪趣味。しかし読み始めたら止まらない暗~い魅力がある。著者は1987年生まれだそうだけれども、これからが楽しみな才能。
・姉飼
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/12/zoz.html
・粘膜人間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-948.html
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