紗綾―SAYA
これは意外にもとても面白かった。大人の恋愛小説。おすすめ。
意外にと書いたのは著者のプロフィールが異色だから。
「コラス,リシャール
フランス生まれ。パリ大学東洋語学部卒業。在日フランス大使館勤務、ジバンシィ日本法人代表取締役社長を経て、1985年にシャネル入社、1995年、シャネル日本法人代表取締役社長に就任。フランス商工会議所会頭、欧州ビジネス協会(EBC)会長を務める。国家功労章シュバリエ章受章、レジオン・ドヌール勲章受章。2009年にフランスで発表された『SAYA』で、フランスの文学賞「みんなのための文化図書館賞」を受賞」
生粋のフランス人であるシャネル社長が、なんと自ら日本語で書いた小説である。本人をモデルにしたような経営者も物語に重要な人物として登場する。
主人公は日本の老舗デパートのベテラン社員。仕事もできてほどほどに遊びも知る。ファッションブランドを扱うためにフランスに転勤していた時期があり、フランス語に堪能でクラシック音楽など教養も豊かな中年男性が主人公。鎌倉の一軒家に住んでいて、ちゃんと妻子もいる。
そんな主人公が青天の霹靂であるリストラにあい、絶望しているときに、紗綾というミステリアスな長身黒髪の女子高生と恋に落ちる。ちょっとありないことに紗綾もフランス語が話せて、クラシック音楽を愛好していた。高尚な話を楽しみながら、女は別れ際に脱いだ下着を渡す。二人の関係は明らかに不倫で援助交際だが、当人同士では一途な純愛でもある。
専業主婦である主人公の妻の視点も加わって、登場人物たちの家族生活、会社生活が残酷に破たんしていく様子が描かれる。
フランス人ということで気になる日本語だが、これが完璧というか普通の日本人でも書けないプロの作家の文体である。読者の心をつかみ、読ませる、驚きの言語能力だ。この人なら官能小説だって書けそうだ。大物経営者で小説家というと、日本では小林一三(阪急創業者)、辻井喬(セゾングループ代表)がいるが、文学創作と経営能力という普通は両立しなさそうな資質に加えて外国語。天は二物も三物も与えるのだなあ。
・ヴァレンタインズ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/07/post-1484.html
アイスランド文学でも大物経営者で小説家がいる。これはアメリカのタイムワーナー副社長オラフ オラフソンが書いた傑作小説。
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