くちぬい
坂東 眞砂子の民俗ホラー。
東京の放射能汚染を逃れて、四国の村へ移住した定年夫婦。
高知の山奥にある白縫は、老人ばかりの過疎の小さな村だ。そこには朽縄=くちぬいさまという神様がいて、白い糸で人の口を縫うので白縫という地名があるのだと村人は言う。夫婦は、村の奥まった場所に真新しいログハウスを建てて越してくる。夫の俊亮は夢だった田舎生活を満喫し、麻由子もまた安心な生活を得た。
だが幸福な田舎生活は長くは続かない。俊亮が敷地につくった陶芸の窯が、村の古道「赤線」の上にかかっていたことに、老人たちがけちをつける。たいしたことではないと放置していると、誰の仕業かわからない執拗な嫌がらせが始まる。
「瀬戸さん、あんた、そんな我が儘いうたら、この白縫では生き辛うなりますで」
口が災いするというが、呪いの本質は言葉である。狭い村社会では言葉の呪縛が恐ろしい。正体不明のなにかが村人たちを操る。夫婦を精神的に追い詰めていく。
「この国にいる限り、逃れられない呪いがある。」。
恐ろしいのは放射能ではなく村の掟なのだった。
この世界観はもっと大きな物語のプロローグにするといいと思う、続編期待。
・異国の迷路
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-394.html
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