週末
『朗読者』のベルンハルト シュリンク 最新邦訳。
テーマが重ためだが読みやすいミステリー中編。
ドイツ。二十数年前に赤軍派テロリストとして重い罪を犯した男イェルクが、恩赦を受けて出所する。服役中もずっと面倒を見続けた男の姉は、週末にかつての友人知人たちを、郊外の家に呼び集める。男が捕まったきっかけは誰かの密告だった。裏切りったのは誰だったか?。昔の仲間たちとの会話の中で、テロ事件の闇の部分がしだいに明らかにされていく。狭い空間での3日間を少数の登場人物の会話中心で描くので、まるで部舞台劇のようだ。登場人物たちが隠している秘密や、心の葛藤が最後まで緊張感を失わず続いていく。
ミステリではあるものの、消せない過去と折り合いをつけて生きていく人生がテーマの純文学作品である。許されはしないのだけれども生きていかねばならない人間の現実。出所したイェルクに対して、さらなる闘争参加を求める人もいれば、自己批判や弁明を求める登場人物たちが、さまざまな思惑で絡んでくる。
郊外の庭付きの家は、妙にさわやかで明るい。集まった男と女の間に恋が芽生えたりもする。3日間に10人くらいの人物像を丁寧に描いている。本物のテロリストだったら、こんな展開にはならない気もするが、演劇作品として読むと、かなりよくできているなあと思う。また映画になりそうな内容。
・朗読者
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-818.html
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