うわさとデマ 口コミの科学

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・うわさとデマ 口コミの科学
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「噂とは、話し手と聞き手にとって重要か関心が高いとみなされ、真実と証明されずに世間に流布している情報である。噂は曖昧な状況か、あるいは脅威に直面しているか将来の脅威が予想される状況で生じる。噂は曖昧な状況を理解するか、脅威に対処するために用いられる。」

噂を検証するさまざまな社会心理学実験の結果が示唆に富んでいる。株式取引をする人たちを想定した実験では「新聞の第一面や噂を与えられたグループ」よりも「与えられなかったグループ」のほうがよい取引成績をあげた。良いニュースが出ると株価が上がる。悪いニュースでは下がる。しかしニュースが株価と連動しているのは、経済ジャーナリストがその日の値動きとつじつまのあうニュースで説明するからに過ぎない。多くの人がニュースに惑わされて、安く買って高く売るという株式取引の鉄則を守れなくなっていたのだという。「ニュースがないのは良い知らせ」だったのだ。

望み、恐れ、憎しみという人間の強い感情によって「願望の噂」「恐怖の噂」「くさびを打ち込む噂」の3種類の噂が世の中を飛びまわっている。噂の流布量=話題の重要さ×曖昧さ というオルポートの噂の法則にしたがって、私たちにとって切実な事柄に関して噂はでまわりやすい宿命を持つわけだ。

組織内を流れる噂は正確であるというのは面白い発見だ。第二次世界大戦時の米国陸軍では「主要な作戦行動や転属、上層部の変化について、正式発表の前にすでに正確な情報が流れていた」ことが検証されている。現代の英仏の企業の従業員の67%が「重要な情報はまず噂で聞く」そうだ。組織内の噂は外の噂よりも正確である確率が高い傾向がみられる。

一方で業界の噂はどうか。ウォールストリートジャーナルに掲載された企業買収の噂の実現度は43%。ゲーム情報誌のゴシップコラムに掲載されたコンピュータゲームの噂が真実になったのは約50%。噂は「まったくかほとんど正確」あるいは「まったくかほとんど不正確」。そして正確な噂は時間が経つにつれて一層正確度を増し、不正確な噂は逆に一層不正確に変化していくこと(「噂のマタイ効果」)がわかったという。

話し合いが歪みを緩和する。記憶の限界で細部が失われる。ステレオタイプに一致しない噂は削除される。両方の視点を持つ者は削除される。噂の変化にはさまざまなバイアスがはたらいている。そのバイアスが噂のマタイ効果を強化する。

そしてウェブはこのマタイ効果を増幅する装置にもなっているそうだ。たとえば政治系ブログではリベラルなブログはリベラルなブログにリンクしている。保守的なブログは保守的なブログにリンクする。イデオロギーを超えるリンクは全体の10%程度でしかなく、リンクをたどって議論を読んでいけば、政治的傾向は強化されるばかり。インターネットが意見の多様性を促すとは限らないという実証だ。

著者は「噂は世界を共同で理解する手段」とポジティブに評価しているが、大災害やテロが身近にある現代では、噂の取り扱いは生死にかかわる能力になってきている。うわさとデマ 口コミの科学は学校でも教えるべきだ。

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このページは、daiyaが2011年10月10日 23:59に書いたブログ記事です。

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