アメリカを変えたM世代――SNS・YouTube・政治再編

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アメリカで1982年~2003年に生まれた世代をミレニアムの頭文字をとってM世代と呼ぶ。アメリカ史上もっとも人口が多く、もっとも多様な人種が混在する世代であり、彼らは米国の未来に大きな影響力を持ち始めている。政治におけるM世代の影響を中心に、米国のいまを著名な政策コンサルタントと世論調査の専門家が解説する。年長の世代が、今の若者たちも、自分たちが若者だった頃と同じように行動すると思ったら大間違いだから、目を覚ませという警鐘を鳴らす内容にもなっている。

M世代は、楽観的で、性別や人種にこだわらず、グループ志向、コミュニティ志向が強い平和主義者たちだ。そして彼らはデジタルネイティブであり、FacebookやTwitterを使ってネットワーク化が進んでいる。選挙に際しては"ネットルーツ"と呼ばれる政治勢力を形成し、数の多さも背景に有力な有権者層を構成している。政治に関心はあるのに、その世代に「政治的ボス」はいないというのもネット時代ならではだ。テレビをあまり見ない。

そしてM世代の3分の2が自分の人生を「素晴らしい」または「かなり良い」と評価している。75%が5年後の生活は今より良くなっていると予想している。この楽観性は、他の世代が若かったころと比較しても際立っており、若いからではない、M世代のユニークな特徴だそうだ。不況で育って将来に明るい未来を描けないでいる日本の若年層と対照的である。

世代理論家のウィリアム・ストラウスとニール・ハウはアメリカの近代史を

1 理想主義世代
多数派で内面を大事にする。自分の価値観で行動。ベビーブーマー世代。

2 反発世代
少数派の世代。独立独歩で起業家精神と現実感覚が強い。X世代。

3 市民社会世代
多数派で社会性を大事にする。M世代、1サイクル前のGI世代

4 順応世代
リスクを避け、体制におもねり、妥協しがちな少数派世代。まだ幼稚園児。

の4つの世代が20年ごとに循環するサイクルとみている。重要なのは、多数派であり改革派でもある、1の理想主義世代と3の市民社会世代である。サイクルの中で、社会をひとつの完成形にするのがM世代なのだ。

M世代は、議会による法律制定より、有権者による採択の方が、人々の利益になる法律を生み出しやすいと考えている、という調査結果にみられるように、直接民主制承認の傾向がある。みんなで議論をして決めるのが好きだ。男女も人種も年齢も、何事も差別せず、分け隔てなく接する。まさに民主主義とネットワークの申し子みたいな世代である。

2012年の大統領選挙ではより多くのM世代が投票権を獲得して、政治再編を巻き起こすだろうといわれている。従来のアメリカ政治の論点だった、銃や中絶でリベラルか保守かという価値観の問題はM世代にとってはあまり関心がない。マスメディアを握ったものよりも最新の情報技術を活用した候補が支持を得ることも間違いないと著者は予想している。

アメリカのこれから、特に来年の大統領選挙のゆくえを考えるのに、大変示唆に富む面白い本だった。あとがきでは日本にも、対応する4つの世代があるとあとがきで監訳者が書いているが、米国のように人口が多い世代ではないから、政治勢力としてはあまり期待できないのではないかと思ったりもする。

最近みた論文にこんな選挙制度改革論があった。

・次世代へのコミットメントに国民的合意を
世代間資源配分の公平を目指す
選挙制度の改革
http://www.nira.or.jp/pdf/monograph33.pdf

"次世代に「投票権」を

次世代への適切な投資を実現させるための政策として、2009 年に全人口の 16%を占め
ながらもその意思を無視されている未成年に選挙権を与え、その権利を彼らの親に代表
てもらう、というのはどうであろうか。

これはポール・ドメイン(Paul Demeny)氏が提案した投票方式である。このドメイン
投票方式に従うならば、子供のいる有権者は、本人の 1 票の他に子供の数だけ票を所有することになる。子供に親が 2 人いる場合は、子供 1人につき 0.5 票を親が投票することが妥当であろう5。日本の場合、2007年の人口構造を使って計算すると、この投票方式を導入した場合の票の分布は図表 5 のようになる。親が投票する票は全体の 24%から
37%に増加する一方、55 歳以上の票は全体の 43%から 35%に減り、勤労・将来世代の票が55歳以上の票と拮抗するようになる。これにより長期的な政策の影響を受けやすい次世代の意思が、政策決定に反映されやすくなるだろう。"


少数派の若年層の世代を守るには、これくらいの思い切ったアイデアが必要なのではなかろうか。

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このページは、daiyaが2011年10月 2日 23:59に書いたブログ記事です。

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