コクリコ坂から
映画『コクリコ坂から 』の原作となった少女漫画。映画との違いをみるのが面白い。設定も物語も、かなり違う。映画のカルチェラタン保存運動は、漫画では制服自由化運動であるし、性別や性格が異なるキャラクターもいる。
宮崎吾朗監督はあとがきで、コクリコ坂からの企画が示されたときに、映画化に対して後ろ向きだったと心情をこう告白している。
「1963年といえば、日本は高度経済成長の只中にあって、その当時高校生だった人たちはいわゆる団塊の世代だ、現代社会が行き詰っているとするなら、その原点である時代を描いても、昔は良かった式の映画にしかならないのではないかという疑念がついて回った。」
何を悩んでいるのだろう。私は映画版の『コクリコ坂から』がかなり好きなのだけれども、それはまさに、文科省推薦のとれそうな「昔は良かった式」だからいいねと思った。
あんなに純真無垢な少年少女は現実にはいないし、舞台となった横浜や新橋の街並みももちろん今はもうない。古き良き時代を懐古調で描き、ある世代に対してストレートに心温まるファンタジーをつくった。ジブリの得意技である、それでいいじゃないか。へんに未来へのメッセージなんて折り込まなくてよいのではないか。
ファンにはたいへんおすすめのビジュアルガイド。カルチェラタン新聞の中身が読めたり(実際に細部までつくっていた)、作品の舞台となる横浜ロケ地ガイドは横浜が近い人にはうれしい。物語を最初から最後まで追った解説が充実しているのだが、ネタバレしてしまうので、この本は映画を観た人向け。
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