アナロジー思考
「地頭力」「フェルミ推定」の仕掛け人 細谷功氏著。
すべての思考は「類推」から始まる。いわれてみればそのとおりか。
アナロジー(類推)思考とは、著者の言葉によれば、二つの世界の比例関係を利用した思考法のこと。既知の領域と何らかの類似性を有する未知の領域に対して、既知の知識を応用して、未知の領域の知識を新たに得るということ。アナロジーには「自分の理解」「他人への説明」「アイデア創出」という目的が考えられるという。
どこから借りてきてどこへ持っていくかの一般的パターンが例示されている。
1 よく知っている世界 → 知らない世界
2 進んでいる世界 → 遅れている世界
3 身近な世界 → 縁遠い世界
4 極端な世界 → 「角が丸い」世界
1は理解のためのアナロジー。「欧米ではすでにこうなっている(日本ではいまだにこうだ)」というのは2のパターン。3は「たとえ話」。4は子供のストレートな感情表現を大人の世界の読みときに利用するようなパターンだ。適切なアナロジーを用いることで、複雑な事柄を、わかりやすく印象的に伝達することができるわけである。この本にリスト化されている、よくある類推パターンをあらかじめ覚えておくと思考のスピードアップになりそうだ。
そしてアナロジーによるアイデア創出は、遠いところから借りてきて組み合わせる、ことが重要だという。単なる真似やパクリではなく、まったく違う世界からの借用が、ブレークスルーのアイデアになる。表面的類似(オヤジギャグ)ではなく、より深い構造的類似のアナロジーこそ重要であるとして、その発見方法や訓練法を教える。
「「構造的」類似とは、複数の事象の「関係性」に関する類似のことであり、表面的類似に比べて見つけるのが難しい分、その価値も大きい。」
ビジネスの世界では、「一見違うが実は構造的に似ている業界」を探すことが重要だが、そのためには「事業特性」に注目して探すとこんなふうにみつかるとして、アナロジー思考の実践がある。
会社における新人とベテランの能力差は、主にアナロジー思考能力の違いなのではないかと思う。新人は個々の具体的な事象にこだわってしまうが、ベテランは慌てず、過去の経験や他の領域の経験と、目の前の事態を結び付けて、解決や突破法をみつける。アナロジー思考を意識することはデキル人への第一歩となるはず。新入社員にも、おすすめ。
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