寒灯
芥川賞をとった『苦役列車』の主人公、北町貫多のその後を描く続編。
同棲する彼女のヒモのような生活を送っている貧乏作家の貫多。短気な性格から些細なことに激昂し、自分に優しくしてくれる彼女に暴言を吐いてしまう毎日。作家でインテリなので、その暴言の内容が、衒学的で、巧妙で、重箱の隅をつつくかのようにネチネチと、厭らしい。こんな風にはなりたくないよなと思う男の厭らしさを、仮想的にたっぷり味わうのがこのシリーズの醍醐味であろう。それはまた男(女もか)なら誰しも少しは内面に芽を持っている厭らしさでもあるのだ。
本作の最後で話は一段落するわけだが、シリーズとしては『苦役列車』、『寒灯』ときてさらに連作あるいは三部作くらいになるのであろうか。鬱々と籠った内面の圧力が高まって爆発する瞬間がヤマになる筋であるが、主人公がひきこもりであるので、これといった事件が起こらない話だから、ワンパターンに陥る可能性はある。次回作以降でどういう変化をつけてくるかどうかが気になる。
・苦役列車
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/02/post-1392.html
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