あの日からのマンガ
「『たとえ間違えているとしても、今、描こう』と思いました」しりあがり寿。
震災から一か月頃に発表された朝日新聞夕刊連載の4コマ『地球防衛家のヒトビト』と月刊コミックビーム発表作の読み切り中編からなる漫画作品集。すべて地震、津波、原発という難しいテーマを扱う。
ナンセンス四コマ漫画は、震災と原発にあたふたとする人々の姿を軽く笑い飛ばす。
主人公が「地球防衛家」なのに被災地復興へいかないのもおかしいだろうと、著者自身がボランティアへ行ってきて、そこで体験したことを漫画で報告するシリーズがある。
主人公は被災地から帰宅すると「3日か4日いただけだし、被災地は広いし、簡単にどうだったなんてとても言える事じゃないけど...」と前置きしながらも「いやまあ、ホントに大変でこんなこと実際にみるまでは...」としゃべりまくる、しゃべりたくなる。人間ってそんなもんだという可笑しみを4コマで表現する。
原発放射能をナンセンスに笑い飛ばした川下りシリーズも「セシウムちゃん」とか「危険な女」としてのゲンパツとか、きわどい擬人化で、フクシマ時代のシュールな笑いをとる。そして笑いの底の意味を読者に考えさせる、問題提起する。
なんといっても圧巻は中編の読切り漫画である。震災から50年後の日本の姿をSF的、寓話的に描いた『海辺の村』、震災後を懸命に生きる女性を描く『震える街』、死と再生をひとこともせりふを交えずに美しい映像にした『そらとみず』。この3作品は目頭が熱くなった。すばらしい傑作である。
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