教養としてのゲーム史
ゲームの「進化の系統樹」がよく整理されている。
たとえば最初に紹介されているのは、
ポン → ブレイクアウト → インベーダー → ギャラクシアン → ギャラガ
という進化系。単純なテニスゲームのポンにブロック要素を加えるとブレイクアウトになり、ブロックが動くインベーダーに進化して、さらに自由度の高い動きをするギャラクシアンができて、合体などの要素が加わるとギャラガになる。
ほかにも
ヘッドオン → 平安京エイリアン → パックマン
ドンキーコング → マリオブラザーズ → スマブラ
ウルティマ、ウィザードリィ → ドラクエ
ドルアーガの塔 → ハイドライド → ゼルダの伝説
プリンセスメーカー → 同級生 → ときメモ → ラブプラス
などなど、主に画面の見立てを軸にして系統を有名なゲームを挙げながら説明していく。80年代から代表的なゲームを遊んできたという人ならば、頭の整理ができて気持ちがよい体験が味わえる。
果たしてこのやり方で、数千、数万もあるゲームのすべてをわかりやすく進化の系統樹で説明できるのかどうかわからないが、この取り組みはビデオゲームの考古学で有効な分類法だと思う。今後の著者の集大成に期待したい。
ゲームの進化の歴史には開発上のドラマやハプニングもあったことが紹介されている。制約を魅力に変えたインベーダーの開発エピソードなんて特に面白い。インベーダーでは敵を倒すほど、動きが速くなってエキサイティングになるわけだが、あれは実は制約由来だった。現代の富豪的プログラミングの状況では生まれなかったかもしれない演出だったわけである。
「スタート直後にインベーダー軍団が一匹も欠けていない状態では、描きこむドットの数が多い分だけシステムの負担も大きく、動作も重い。が、インベーダーが倒されて数が減ると、処理能力にも余裕が生じて、移動スピードや攻撃も速くなる。ハードの弱点となるはずの特性が、逆に展開にスリリングな緩急を与えたのである。」
当時はユーザーも、画面上に巨大なボスキャラクターがうごめいたり、複数の敵キャラが高速に同時に動き回るのをみると、素直に感動したものだ。ゼビウスで描きこまれた地面がスクロールするのを唖然としながら見ていた人も多かった。ゲームってどんどん進化しているなあと言う感覚が日常的にあった。あの80年代の日々がゲーム進化のカンブリア爆発だとすると、高機能・高精細のゲーム環境になれてしまっている現代は進化が停滞している気がするなあ。
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