アライバル
ショーン・タンという作家が書いた文字のない長編物語の絵本『アライバル』。同氏はこの本で世界各国29の賞を受賞、ショート・アニメーション『The Lost Thing』が、第83回アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。
これは20分ほどで読めてしまう大型絵本ですが、読み返すのが3回目です。移民を決意した一家の父親が、単身で船に乗って、異国に入っていく。異文化と格闘しながら、自らの場所を築いていく。モチーフは第二次世界大戦の頃のアメリカ移民ですが、実は結婚にせよ就職にせよ、新しい文化に入っていく、そこで新たな価値観を受容して生きていくっていうことは、社会を生きる人間にとって普遍的な体験だと思うのですね。その普遍を幻想的な寓話として、本当にうまく描いているな、天才だなと感じて何度も読み返す、魅力的な本です。
まったく文字を使わない表現でメッセージを表現する。移り変わる雲のかたちを何十コマも続けて描いて長い時間の経過を表したり、地球にはいない動物を登場させて異国を表す。そういう表現の工夫も素晴らしいし、なにより丁寧に描かれた見開きの絵のページなんかは額縁に入れて飾っておきたいほどのアートのクオリティをもっています。見惚れてしまったページが何枚もありました。
アニメ『つみきのいえ』が好きな人なんかに特におすすめですよ。
以下は大人の絵本系のおすすめ
・ぼくがラーメンたべてるとき
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/03/post-1407.html
・どんなかんじかなあ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1364.html
・『終わらない夜』と『真昼の夢』
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1049.html
・なおみ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-895.html
・大人な絵本 「天才の家系図」「裁判所にて」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-812.html
・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html
・ちいさなちいさな王様
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/eel.html
・「百頭女」「慈善週間または七大元素」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/post-771.html
・アウトサイダー・アート
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-739.html
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