友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学

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集団サイズと新皮質の大きさは比例する。研究の結果、人類の脳が扱う最適な集団の人数は150人。ロバート・ダンバーは、部族社会の村や氏族、軍隊の中隊、成功している工場など、人類の基本的集団の構成員が150人前後であることを明らかにした。これが気のおけない人間関係を維持する認知限界なのだ。(ダンバーはその前後規模の集団も認め、5,15,50,150,500,1500、5000とネットワークは3の倍数になるともいう。Facebookの5000人上限はこれに由来したりして?)

人間が他者を思いやる能力の基礎には「心の理論」がある。他者の心のうちを客観的に想像する能力のこと。この能力があるから、小説も科学も宗教も成り立つわけだが、意識水準の高次化が人間の高度な文化を生み出しているという。

自分の意図を認識することが一次志向意識水準。自分の意図を認識したうえで、相手の意図を見透かすのが二次志向水準。サルや三歳児は相手を欺くことができるが、せいぜい二次である。人間はゴッコ遊びができるようになって少しずつ水準が上がっていく。物語は高次意識水準の産物だ。登場人物が増えたり、観客を意識したりすれば、さらに高次の志向水準が必要になってくる。シェイクスピアの戯曲ではおよそ第6次水準あたりまで脳を駆使することになるそうだ。

「もっともほとんどの人は、五次志向水準までが能力の限界だろう。偉大なストーリーテラーは、その限界ぎりぎりのところまで観客を押しやって心を揺さぶり、感情をかきたてる。そのためには作者自身が六次志向意識水準まで持つ必要があるが、それができる人間は全体の四分の一もいるかどうか。やっぱりシェイクスピアは天才なのだ。」

生物の脳が進化する理由の一つが性淘汰で有利になるためだが、人間の脳が発達したのは一雌一雄関係を保つためではないかと著者は考えている。ひとりのパートナーと長く安定した関係を続けることが脳を進化させた。事実「浮気好きな種の脳は小さい」からだ。高次の意識志向水準がもてる人は、話が面白いだろうし、思いやりが深くて優しい人ということにもなるか。

脳の大きさ、認知の限界、人間関係の複雑さ、集団の数というロジックでダンバー数150は導き出される。有名な150人説だけでなく、進化人類学の観点から、人間集団に現れるパターンや性質を多様な視点から一般向けにわかりやすく論じている。

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このページは、daiyaが2011年8月10日 23:59に書いたブログ記事です。

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