一万年の進化爆発 文明が進化を加速した

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・一万年の進化爆発 文明が進化を加速した
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非常に面白い。知的好奇心をかきたてられる。

ヒトの生物的進化は緩慢になったのではなく、むしろ加速している?。

今日のヒトという種は、誕生以後600万年間の平均の100倍のスピードで進化しているという仮説。数万年から数十万年の長さが必要だと考えられてきた、ヒトの大きな進化も、数千年あるいはもっと短い時間で実現されていると著者はいう。進化の加速の前提はヒトが増えて混ざったことだ。

「そのような大きな集団で望ましい変異が広がるには、旧石器時代のような小さな集団で広まるよりもずっと長い時間がかかると思うかもしれない。しかし、有利な対立遺伝子の頻度は、よく混ざり合った集団ではインフルエンザのように時間とともに指数関数的に増大するので、1億人の集団に広まるのには、1万人の集団に広まる時間の2倍しかかからない。」

進化加速の大きな原因は約一万年前に始まった農業であると指摘されている。農業によって人口は爆発的に増加し、食事、病気、社会、長期計画など大きな変化と利益を得た。農耕社会では、求められる性質が狩猟社会とは異なるものになった。いま好ましいとされる心や知能も農業社会がつくりだしたものである。そして利己的で勤勉で禁欲的な人々の割合が、狩猟採集民を急速に駆逐していった。船乗りと酒場で働く女性たち、行商人と農家の娘たちが、最近の人類の進化に重大な役割を演じたという話もある。

著者が提唱する、生物学的な変化が歴史を動かす大きな要素であるという仮説もとても魅力的だ。土地面積に対して高生産性の酪農が広まるには、乳製品を摂取するヒトに乳糖耐性の遺伝子が広まっているという前提が必要だとか、アメリカ大陸をヨーロッパ人が簡単に征服できたのは、先住民が、武力にではなく感染症に対する抵抗力を持っていなかったからだ、など、人類の社会的歴史を生物学的歴史に読み変える。

本当に数百年や数千年でヒトは進化するものなのか?。人類は家畜や作物を大きくつくりかえてきた。たとえばイヌの品種のほとんどはここ数百年で人類がつくりだしたものだ。そもそも野生のイヌなどいなかった。

「イヌは品種によって、学習の速度と能力に著しい差がある。新しい命令を学ぶのに必要な反復の回数は、品種によって10倍以上の開きがある。平均的なボーダーコリーは、5回目の反復で新しい命令を学び、95%の確率で正しく反応できるのに対し、バセットハウンドは、80から100回繰り返し学習させても、正しい反応が得られるのは25%程度である。」

著者は最終章では人類にもアシュケナージ系ユダヤ人(アインシュタイン、ジョン・フォン・ノイマン、リチャード・ファインマンなど科学関連のノーベル賞の4分の1を獲得)の研究を紹介する。ヒトにおいても比較的短い時間で、顕著に能力を獲得することがありえるというのだ。優生学と差別の復活につながりそうな危険性をはらんでいるが、とても説得力がある内容で、ジャレド・ダイアモンドのベストセラー『銃・病原菌・鉄』の如く魅力的な物語が含まれている。

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このページは、daiyaが2011年7月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

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