アクアリウム
新作でもなんでもないが、夏の娯楽読み物としておすすめ。
ダイビング仲間が遭難した奥多摩の地底湖に単独で潜る主人公の正人。遺体捜索で洞窟の中を泳いでいるとき謎の大型生物に遭遇する。その生物は言語を使わず、正人の心に直接的に働きかけ、不思議なビジョンを見せる。正人はイクティとなづけたその未確認生物との交流に魅了されていく。
一方で地底湖周辺地域では森林開発が進行し、イクティの静かな生息環境に致命的な影響を与えようとしていた。正人は環境保護活動団体に加わって、イクティを取り巻く自然環境を守ろうとするが、そこに群れる活動家や政治家の権謀術数の闇にも巻き込まれていく。
幻想ファンタジーと社会派フィクションが絶妙なバランスで融合している。イクティの描写は魅惑的。ストーリーから懸念してしまう安っぽいエコ的メッセージはなくて、なんでもありのしたたかな人間たちの怖さが語られている。篠田節子の初期の傑作。
篠田節子の作品の過去の書評。
・薄暮
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1026.html
・夏の災厄
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-802.html
・レクイエム
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-752.html
・カノン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-740.html
・弥勒
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005292.html
・ゴサインタン―神の座
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005260.html
・神鳥―イビス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005177.html
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