「あがり」は味方にできる
「大事なのは「あがり」のコントロールです。心臓のドキドキは大き過ぎると課題の達成に差し障りますが、最適な状態に保つことができれば、反対にあなたの力になります。」
あがりの正体を知り対処法を身につける。あがり研究が専門の心理学者の本。面接、プレゼン、スピーチ、スポーツ競技などさまざまなシーンでのあがり対策をとりあげる。
自意識と対人不安がまねくあがり。集団の調和を大切にする日本人の対人不安の値はアメリカ人より高いそうだ。日本の教育では人前でのスピーチの訓練や実践の機会が少ないという理由もあるだろう。泣きながら震えながらプレゼンする大学生のあがりをときどき見る。
あがりは生理的覚醒(心臓のドキドキや体の震え)と認知的不安(嫌な考え)によって起こるもので、いかにこの二つの要素をコントロールするかが大切だと著者は結論している。
あがっている状態で行ったパフォーマンスのうち約50%は成功していたという調査結果もあって、ある程度の興奮と覚醒はプラスに働くことがわかっている。これは誰しも経験的に納得できる話だろう。いいパフォーマンスにはノリが必要だし、本番の緊張感が能力を引き出すことも多い。
研究的には、
・生理的覚醒が低いときは認知的不安がパフォーマンスを引き上げる
・生理的覚醒が高いときは認知的不安がパフォーマンスを引き下げる
という関係があって、
認知的不安が最低値、生理的覚醒が50%のときに最高のパフォーマンスが出せる
という状態が好ましいそうだ。
一度あがりで低下したパフォーマンスが元に戻らず調子が「崩れた」モードに入ってしまう「ヒステリシス現象」もあるというから恐ろしい。こういうプレゼンの大失敗事例、年に1回くらい見る。
ゲームの難易度が高いとき、聴衆の応援はプレッシャーとなってパフォーマンスを低下させる。ゲームの難易度が低い場合は大きな差がない。実はホームよりアウェイの方がプレイヤーは実力を発揮しやすい。というデータもあった。
自己暗示、運動、イメージトレーニング、積極的な思考、無関係な行動、回避、開き直りという「あがり」への代表的対処法7つを検証した結果、イメージトレーニングのみが良い効果を示す。想像上で行うリハーサルがあがりの制御につながるという。
私もときどきあがる。具体的には社外の重要な会議で手が震えることがある。アイデアが頭の中にあって早くそれを話したいが、話に割り込むチャンスがなかなかないときに起きる。出番待ちの恐怖感。手の震えを周囲に知られたくないので、無意味にペンやノートをいじったりして順番を待つ。ここで自然を装う自分が不自然に見えているのではないかという不安が頭に浮かぶと、崩れモードに入ってしまう。
「相手に欠点が伝わってしまう感覚を「自我漏洩感」といいます。たとえば笑顔を作ろうとしたものの、かえって引きつってしまい、無理をしているのが話し相手にばれてしまったと感じたことがないでしょうか。」
ああ、まさに自分の場合の話だなあと思える図星の指摘、確かにあるあるという納得のデータがいっぱいの良書だった。すぐあがってしまうという人、これからプレゼンが増えるという人、おすすめ。
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