民宿雪国
これはすごい(笑)。抱腹絶倒。しかし癖あり。
40代以上で洒落のわかる小説読みにのみ強くおすすめ。
「丹生雄武郎は2012年8月15日に亡くなった。享年97歳だった。彼は国民的画家として愛される一方で、長年にわたって寂れた民宿のあるじであったが、その人生は多くの謎に満ちている。本人が鬼籍に入ったため、憚りながらその直前まで彼の軌跡を追っていた私が、多数の証言と彼の死後発見された三十七冊の日記などを用いて、数奇に彩られた人生を明らかにしたいと思う。」(矢島博美)
というプロローグで、丹生雄武郎という男と民宿雪国をとりまく人間模様が語られるのだが、そこに起きるさまざまなエピソードが、無理やり昭和の大事件と接続されていく。あれもこれも黒幕は丹生雄武郎だったのか、壮大な我田引水的風呂敷が広がっていく。
あまりに荒唐無稽な展開に、小説としてのリアリティは物語前半で早々に破綻するが、著者の悪ノリこそが、この本の真髄である。『日本のセックス』同様に日本文学を下品にレイプするかのような破壊力と、日本の現代史を批判的に読むインテリジェンスとが同時にある。ひでえ小説だなあと思うと同時に、昭和について結構な見識がないと楽しめない内容でもある(だから40歳以上におすすめ)。
ひねりと笑いの効いた怪小説。私はかなり好きだな、この作家。
・日本のセックス
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/post-1280.html
同じ樋口毅宏の作品。これもまた色モノだけど大傑作。
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