高層難民

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・高層難民
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大震災が大都会を襲ったときに生じる「高層難民」「帰宅難民」「避難所難民」という震災の新しい顔について実態を解説した新書。

日本で高層建築が始まったのは、建築基準法で高さ制限が撤廃された1963年。高層ビルが立ち並ぶ東京は、関東大震災以来80年間、巨大地震に襲われていない。阪神淡路大震災は被害は甚大だったが規模はM7.3の直下型で短周期振動の「大地震」であって高層ビルの被害はほとんどなかった。だがM8級で高層建築の弱点である長周期振動を起こす巨大地震に見舞われた場合、高層ビルが大きな損壊をする可能性もあるという。

そしてエレベーター閉じ込めが30万件発生し、閉じ込め1万2500人以上が長時間、運が悪いと数日間も、エレベーターに閉じ込められたままになる。なんとか知恵を使って脱出すれば?いやいや。「エレベーター内に脱出口があると思っている方があるかもしれませんが、あれは映画の世界の話で、エレベーターのカゴに外側から中に入ることはできても、内側から外側に出ていくことはできません。」とのこと。

そして揺れが収まった後には長期間エレベーター、電気・水道が停止して生活が困難になる「高層難民」が発生する。5階以上のマンション住民は生活物資の調達に昇り降りさえ大変な困難が伴うことになる。水洗トイレタンクと冷蔵庫の製氷ボックスで合計10~12リットルの飲料水が貴重な水になる。カロリーメイトも常備しておきなさい、と。

そしてビルの外では、交通がストップしてオフィスから帰宅できない帰宅難民が大量発生する。東京駅(14万2000人)、渋谷駅(10万3000人)、新宿駅(9万1000人)、品川駅(8万9000人)、池袋駅(8万5000人)。こうした事態は東日本大震災でも現実になった。もしも大地震が直接首都圏を襲ったら1日後に540万人~700万人の避難者が発生し350万人~460万人の避難所生活者が出ると想定している。避難所の小中学校が崩壊することも予想されるため、避難所にさえ入れない避難所難民もでてきて街はあふれかえることになる。

こうした大都市の大震災直後の世界をシミュレーションして、個人や組織で取りうる対策を教えてくれる。なるほどと思うサバイバルのノウハウがいくつも見つかった。都市住民は必読の内容。おすすめ。

・東北・関東大地震。揺れる新宿の高層ビル 2011年3月11日

3.11 東北地方太平洋沖地震発生時の新宿高層ビル群(Earthquake in Japan)

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このページは、daiyaが2011年6月10日 23:59に書いたブログ記事です。

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