蝶のゆくえ
橋本治 第18回第18回柴田錬三郎賞受賞の短編集。
19歳の短大生、20代のOL、中年の主婦、58歳の未亡人まで、現代に生きるさまざまな年齢層の女たちを主人公にした6編。著者は、巻末収録の自作解説で本作を「女にとって家とはどういうものなのか」という疑問を中心軸にした作品集で「Aによって見られるBと、Bを見ることによって現われるAの姿」という鏡構造を持ち、「普段はあまり意識されてはいない関係が浮かび上がる物語」と書いている。
登場する女たちはなにかしらの関係性にとらわれていて不幸だ。定年退職したばかりの夫がオヤジ狩りにあって殺されてしまったり、連れ子を新しい夫と一緒に虐待してしまったり、二股をかけられた男に呼び出されて関係をぐずぐず続けてしまったり、夫の経済的困難で身を寄せた実家で姑との関係に悩んだり。
昔の女の一生と違うのは現代の女たちは自分で人生を選択できるところ。そうではない道も選べるのに、怠惰や欲望やなにものかにとらわれて、ずるずると不幸へはまっていってしまう。その様子にすごくリアリティがある。平穏な日常に潜む闇が怖い。
・巡礼
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1142.html
近隣住民との対話を頑なに拒否するゴミ屋敷の主人の屈折した半生をたどる。
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