WORLD WAR Z
これは抜群に面白いのでおすすめです。
死者がゾンビになって人間を襲う謎の疫病が、中国奥地で発生して世界中へ感染を広げた。ゾンビに襲われた人間もまたゾンビになっていく無限増殖に、人類はほとんど滅亡直前まで追い込まれた。しかし、残された人類は不屈の精神と決死の作戦の展開により形成は逆転する。長い戦いの末にゾンビとの戦いに遂に勝利して、再び文明社会を構築し始めた。人々はその戦いをWorld War Zと呼んだ。
World War Z後には戦争の正史として「国連戦後委員会報告書」がまとめられた。編纂委員の一人は最終版を読んで、事実とデータのみが残され、戦いに関わった人々の心の葛藤や感動エピソードなどの人間的要因がすっかり削られていることを残念に思った。彼はもうひとつの人間的な歴史書を書くために、世界各国の兵士、政治家、実業家、主婦、オタクなど幅広い人たちに、World War Z当時の個人的な体験談を聞きとった。この作品は報告書であり、100人を超える個人の回顧談が時系列で並べられている。およそ数ページの聞きとり取材記録で全体が構成されている。
ディティールの積み重ねが圧倒的リアリティを生み出している傑作といえる。
著者のマックス・ブルックという作家は、本作以前に「ゾンビサバイバルガイド」というゾンビが大量発生したらどうしたらいいかの詳細マニュアルを書いているゾンビオタクである。世界各国のあらゆる立場の人間が、ゾンビ出現に対してどのように対処するか、リアリティをもって記述できたのは、数千時間に及ぶであろう妄想の蓄積があったからに違いない。
ブラッド・ピットが映画化権を獲得して制作中であるとのこと。本書では100人のインタビューであり、100回くらい視点が変わるわけだが、映画ではどう構成されるのかが非常に気になるところ。
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