つながり進化論―ネット世代はなぜリア充を求めるのか
ネット世代のつながりを元NTTサイバーソリューション研究所長が分析した本。
現代の若者の人間関係を読み解くには「つかず離れずの人間関係」と匿名性と親密性が両立する「親密な他者」がキーワードだとしている。
「他者に気を遣わず、自分は安心できる」
「孤独でないことを確かめ、偶然のつながりに喜びを味わう」
たとえばスターバックスは、他のお客がいっぱいいる中で、個人的に話しかけられることはない空間になっている。そこでは店員からマニュアル対応されることがむしろ快適である。「他者に気を遣わず、自分は安心できる」と「孤独でないことを確かめる」ということが同時に実現できる。MixiやTwitterといった人気のサービスも、つかず離れずの距離感がポイントになっていると著者は言う。
「「つかず離れず」のつながりは90年代からの若者の特徴である。数あるサービスで広く普及したのは、このつながりに相性のいいサービスだけだった。ネットとリアルの相互作用でますます「つかず離れず」になり、表面から感じられない孤独な若者が増えているのかもしれない。ネットはそのリトマス試験しといえる」
映像通信のテレビ電話、CGコミュニティのセカンドライフ、固定通信のキャプテンなどは時代のつながり感にうまく応えることができなかったから散って行ったのだ、と歴史の振り返りもある。
ネット世代はツイッターの仲間内に「○○(地名)あたりで夜ごはんを一緒に食べる奴いる?」と呼びかけて、来たい奴が来ればいい。これなら個別に誘ったり、断られたりすることなく、気の合う仲間とつるむことができる。ネットの技術とサービスが新しい距離感を可能にしている。
調査によると現代の日本人の友人の数は増えており、人間関係が希薄になったのではなく選択的になったのだという記述があった。つながりは、都市生活者にとってより快適で繊細な需要を満たす方向へと進化を遂げている。その恩恵をフルに受けて育ったのがネット世代、そして取り残された旧世代は、その様子を見て、近ごろの若者はけしからんと嘆く。旧世代からするとネット技術が実現した「親密な他者」は想像しがたいものでもあるだろう。
人口的には今後も高齢化によって旧世代も数が多い。世代交代はゆっくりしたペースになるから、この断絶はしばらく続くものと思われる。コミュニケーションの基本が思いやりであるとするならば、ネット世代の気持ちも、旧世代の気持ちもわかる、新旧融合型のコミュニケーションスタイルというのが必要になてくるのかもしれない。
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