ストーリー・セラー
プレゼントを摸した表紙装丁が目を引いて手に取った。
重いテーマを軽い文体で書く現代的なノリに、メタレベルの仕掛けでひねりを加えた娯楽性の高い恋愛小説。たった一人の愛読者のために命を削って作品を書く作家というモチーフが、Side:Aでは男性視点とSide:Bでは女性視点で、転調しながら繰り返される。ちょっと泣ける、重たくないのを読みたい人向け。
そしてこの小説は原稿を書く仕事をしている人に特におすすめ。
作家志望の女性は、誰にも見せたことがなかった自作小説を、会社の同僚男性に密かに読まれて、心をレイプされたかのようなショックを受ける。しかし作品に対して"作家殺し"な褒め言葉を言われると思わず頬が緩む。愛読者には冷たくできない。細かなところで、物書き特有の心理描写がとてもリアルに描かれていて、そういうのってあるあると共感する個所がたくさんあった。
Side:Aの完成度が高くて単体でも良い恋愛作品だ。Side:BはAの話をネタにして、不思議な展開に読者を引きこんでいく。この話どうなっちゃうんだろうと読ませる仕掛けが満載の実験的作品。
『イニシエーションラブ』とか好きな人にもいいかも。
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