あなたの表現はなぜ伝わらないのか―論理と作法
話すこと、書くこと、伝えることの基本要素を整理する教科書的な新書。感情や意志の伝達の原理と効果的な方法論を教える。
コミュニケーションには効率性と効果性のふたつの面があるという話が面白かった。
「伝達には効率と効果が大事である。ここで効率は量の問題で、これは費用と時間で計られるものである。費用も時間もかからないのが効率的な伝達手段である。たとえば、会いにいって要件を済ますより、メールで済めば費用も時間も少なくて済む。つまり、効率がいい。一方、効果は質の問題で、これは伝達目的がどのように達成されたかで計られるものである。メールで用事が済んでも、相手の感情を害してしまったら、メールでの伝達は効果的ではなかったことになる。」
効率性では電子メディアは最高のメディアである。瞬時に何百人でも何千人にでもメッセージを送り届けることができる。しかし電子化効率化の時代だからこそ、わざわざ訪ねてきてくれるとか、花を送ってくれるとか、会食に招待してくれるとか、非効率なメディアは非効率であればあるほど、感情的に伝わる部分が大きい感覚がある。メールで済むのにわざわざという価値が相対的に上がってきたように思う。時代錯誤の「血判書」で大きな商談を成立させた現代の経営者の話を思いだしたが、非効率で効果的を狙うのもひとつのテクニックである。
話し方では、やっぱりこれだなとしみじみ思ったのが、
これから何を話すかを話す(序論)
内容(中身)を話す(本論)
何を話したかを話す(結論)
という序論、本論、結論の組み立て方。これは私も長年のプレゼン経験で、なにか特別な狙いがない限りはこの方法がベストだと、たどりついた結論と同じだ。序論で本論の目次を予告することで聴衆は長い話を聞く受け入れ態勢ができるし、最後で繰り返すことで、ちゃんと聴いていなかった人も、一応聴いていたことにできる、それって重要である。話す側にしても、最後に何を話して終わるかを悩まなくてもよくなる。
コミュニケーションの要素を棚卸して、何が自分に足りないかを考えるてがかりをくれる一冊。
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