竜が最後に帰る場所
やっぱり恒川光太郎はいいなあとしみじみ納得の奇想短編集。どの話も、考えたこともないユニークな異世界設定へずぶずぶと引きずり込まれる体験ができる。
『風を放つ』
アルバイト先の先輩の彼女と秘密の通話をはじめてしまったぼく。彼女はいう。「あたし、恨んだ相手を殺せるんだ」。
『迷走のオルネラ』
義父からの虐待によって歪められた少年の心が生み出す戦慄ダークファンタジー。
『夜行の冬』
冬の静かな夜に聞こえるシャランという鈴の音と雪を踏む音。「夜行」様が来る。
『鸚鵡幻想曲』
この世界の奇異な印象のものを解放して回っているという謎の男アサノには「擬装集合体」を見分ける力があるという。
『ゴロンド』
不思議な生物ゴロンドは、池の中の半透明の膜を破って、広い世界へと生まれ出た。
連続しない5つの話があるが、1話ずつだんだんと異世界度が上がっていく。冒頭の『風を放つ』は完全に現実世界の話とみなせるが、最後の『ゴロンド』は完全に異世界の話である。私は現実と異界の真ん中に位置する『夜行の冬』が一番しびれた。
・草祭
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-894.html
・秋の牢獄
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-776.html
・雷の季節の終わりに
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/11/post-489.html
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