2011年5月アーカイブ
「文学賞メッタ斬り」で有名な書評王 豊崎由美氏の書評論。面白かった。
本についてコメントする立場の人、必読。「トヨザキ流書評の書き方」も付箋の使い方まで書いてあって実践的。
豊崎氏は「粗筋+評価」だけの書評をプロの芸がない「ガター&スタンプ」として批判してきた。書評界ではそれなりに影響力を持つ意見だったが(私も自戒にしてきた)、ここにきて心境の変化があったようで、方針転換を宣言する。
「つまり極端な話、粗筋と引用だけで成立していて、自分の読解をまったく書かない原稿があったとしても、その内容と方法と文章が見事でありさえすれば立派な書評だと今のわたしは考えているのです。」
そして新ルール。
1 自分の知識や頭の良さをひけらかすために、対象書籍を利用するような「オレ様」書評は品性下劣
2 贈与としての書評は読者の信頼を失うので自殺行為
3 書評は読者に向かって書かれなければならない
(2は作家や出版社とのつきあいで書く内輪褒め、提灯書評のこと。)
具体的には、私が共感したところを3つ、引用+コメントさせていただくと、
・ネタバレはやめろ論
「作者が読者のために仕掛けたストーリー上の驚きを、読者の注意を喚起するような書き方ならいざしらず、"オレはこの仕掛けに気づいたぜ"と手柄を誇示するがごとく明かすのはよくない。書評においては、読者から本を読む愉しみをほんのわずかでも奪うことがあってはならない」
小説の書評はネタバレを起こさずに注意を喚起することが本当に難しい。仕掛けが巧妙な本ほど、一番面白くて、要点である事柄を書けないのだ。私もよく迷う。「見事なドンデン返し」「巧妙な伏線」「大団円」と書いたら、読者の驚きを奪うことになりかねない。しかし何も書かなければ本を手に取らせることができない。書評とは必然的にトレードオフの宿命を持つ。書くことで奪うものより与えられるものが多い書き方を考えるのが書評家の仕事なのだなと再認識。
・知識ひけらかしをやめろ論
「わたしは自分で書評を書く時、それが牽強付会になっていないかどうか、なるたけ第三者の目となってチェックするようにしています。「いろんな本を読んでいるんだぞ」自慢のように読めないかどうかもチェックしています。援用は諸刃の剣です。やりかたによっては書評の対象となっている作品をより面白そうに見せもしますが、ただのオレオレ自慢に堕してしまったり、ひどい時は期せずして対象作品を貶めることにもなりかねないのです。」
これは新聞書評でさえ陥っている問題。自己顕示欲が弱いライターというのはいないわけで、ひけらかしのいやらしさもまた宿命である。ま、しかし、俺様文体が持ち味の人(豊崎氏とか...)、博覧強記が売りの人(松岡正剛氏とか...)はそれはそれでよいのではないかと思ったりもする。それこそ「その内容と方法と文章が見事でありさえすれば立派な書評」ってことではないだろうか。
・本の背景を書け
「つまり、プロの書評には「背景」があるということです。本を読むたびに蓄積してきた知識や語彙や物語のパターン認識、個々の本が持っているさまざまな要素を他の本の要素と関連づけ、いわば本の星座のようなものを作り上げる力、それがあるかないかが、書評と感想文の差を決定づける。」
書評がなかったら一生読まなかったであろう本を、読者の手に取らせて読ませることが、書評家のワザだと私は思っているのだが、そのための方法論として、背景の上にその本の意味と価値を浮かび上がらせることがあると思っている。読者が知らない分野の本を、書評家が「すごい本」と褒めて手に取らせるとがっかりさせてしまうことがあるが、ちゃんと背景情報を与えてから手に取らせれば、本の価値を理解してもらえることが多い。適切な背景提示は重要、だから書評家にとって多読は前提になると思う。
このほかアマゾンの悪意あるレビューをめぐる考察、新聞書評の採点、『1Q84』書評読み比べ、日本と海外の書評の違い、メディア史研究者 大沢聡氏との書評問題の対談など、内容はもりだくさん。
怖いものなしのメッタ斬り書評家も実は日々悩みながら書いているのだなあ、ナイーブに苦悩する姿自体がネタになっているのもプロだなあ、書評ブログに対してはちょっと厳しめのコメント(返り血を浴びる覚悟はあるか)は自分に言われている気もするなあと、啓発されるところいっぱいのお得な新書だった。
・勝てる読書 (14歳の世渡り術)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/-14-1.html
・正直書評。 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/post-872.html
東日本大震災における風評被害についても複数の章を割いている新刊。原子力事故と風評被害、メディア報道と風評被害、流通と風評被害、観光産業と風評被害、企業・金融・保険と風評被害。専門家による風評被害を巡る論考集。
風評被害の定義は「ある事件や事故、災害が大々的に報道されることによって、本来「安全」とされる食品や商品、土地を人々が危険視し消費をやめること」。「風評被害」という言葉自体は90年代後半のナホトカ号重油流出事故、所沢ダイオキシン報道、東海村JCO臨界事故の3つの出来事で一般的になったものらしい。
もちろん実質的な風評被害現象はもっと古くからあるもので、当初から原子力と深い関係にあり、1954年の第5福竜丸被爆事件とその後の「放射能パニック」が最初の事例とされている。目に見えない上に、科学的理解が難しい放射線は、風評を引き起こしやすいものなのだ。
多くの場合、マスメディアが風評被害の大きな原因をつくる。事件事故について過度に報道が集中すると、受け手は単純化されたステレオタイプな状況認識を強める。テレビは「多様性」「多層性」を伝達するのが下手なメディアである。危険というイメージが増幅されがちだ。商品の流通関係者も、メディア報道が集中すると、多くの人が目にしたから売れないだろうと考えて出荷や仕入れを止めてしまう。そして消費者も企業も状況に配慮した結果として「自粛」をすることで経済活動を停滞させる。
消費者が科学リテラシーを持てば風評被害は避けられるという簡単な問題ではないと著者は書いている。個人の心理だけでなく、組織や社会の問題と絡み合った複雑な問題なのだ。
風評被害を防ぐには、もちろん消費者ひとりひとりの心がけも重要だと著者は書いているが、現在進行中の福島をめぐる問題については、複雑な思いもあるようだ。最終章にこんなことを書いている。
「ただし、風評被害という限りは、「安全」ということが前提である。科学者同士でも議論が分かれるような汚染が存在する以上は、もう、それは風評被害の範囲を超えている。「安全でない」とするのならば風評被害ではない。 放射性物質による汚染が存在し「リスク」がある以上は、次に重要になってくるのは、「許容量」ということになる。人が健康でふつうの生活を送る上で、あるいは社会が正常に機能する上で、どの程度まで放射線量を受け入れるかということである。」
これはその通りだと思う。有害か無害かを考えるよりも、もはや許容量を考える方が建設的だ。東日本に生活していてゼロ汚染はありえないわけだから。
現在は、食品の放射性物質含有量が基準値以下であれば出荷し、上回れば出荷制限するということを国はやっている。だがその基準値の根拠が論争中のために、巷では産地が東北や北関東だと敬遠する消費者も多い。流通の信用を損なう事件があったせいもあるが、要するに、放射線の影響について、よくわからないので不気味だからだ。
いっそ(基準値以下でも)放射線量の数値を産地同様にタグにつけて市場に流通させたらいいのではないか。「ホウレンソウ ○○産 ○○ベクレル」のように。そうすれば消費者が、カロリー管理と同じように線量管理を行うことができるようになる。被曝で重要なのは積算量なわけだから、既に多量に被ばくしている人と、そうでない人では、身体に取り込んでよい量が違うはずである。
農薬がちょっとかかってます、カロリーがちょっと高めです、と同じように、放射線をちょっと浴びています、でも危険度は僅かで、このくらいです、と分かれば正体不明の不気味さもなくなるのではあるまいか。
ネット世代のつながりを元NTTサイバーソリューション研究所長が分析した本。
現代の若者の人間関係を読み解くには「つかず離れずの人間関係」と匿名性と親密性が両立する「親密な他者」がキーワードだとしている。
「他者に気を遣わず、自分は安心できる」
「孤独でないことを確かめ、偶然のつながりに喜びを味わう」
たとえばスターバックスは、他のお客がいっぱいいる中で、個人的に話しかけられることはない空間になっている。そこでは店員からマニュアル対応されることがむしろ快適である。「他者に気を遣わず、自分は安心できる」と「孤独でないことを確かめる」ということが同時に実現できる。MixiやTwitterといった人気のサービスも、つかず離れずの距離感がポイントになっていると著者は言う。
「「つかず離れず」のつながりは90年代からの若者の特徴である。数あるサービスで広く普及したのは、このつながりに相性のいいサービスだけだった。ネットとリアルの相互作用でますます「つかず離れず」になり、表面から感じられない孤独な若者が増えているのかもしれない。ネットはそのリトマス試験しといえる」
映像通信のテレビ電話、CGコミュニティのセカンドライフ、固定通信のキャプテンなどは時代のつながり感にうまく応えることができなかったから散って行ったのだ、と歴史の振り返りもある。
ネット世代はツイッターの仲間内に「○○(地名)あたりで夜ごはんを一緒に食べる奴いる?」と呼びかけて、来たい奴が来ればいい。これなら個別に誘ったり、断られたりすることなく、気の合う仲間とつるむことができる。ネットの技術とサービスが新しい距離感を可能にしている。
調査によると現代の日本人の友人の数は増えており、人間関係が希薄になったのではなく選択的になったのだという記述があった。つながりは、都市生活者にとってより快適で繊細な需要を満たす方向へと進化を遂げている。その恩恵をフルに受けて育ったのがネット世代、そして取り残された旧世代は、その様子を見て、近ごろの若者はけしからんと嘆く。旧世代からするとネット技術が実現した「親密な他者」は想像しがたいものでもあるだろう。
人口的には今後も高齢化によって旧世代も数が多い。世代交代はゆっくりしたペースになるから、この断絶はしばらく続くものと思われる。コミュニケーションの基本が思いやりであるとするならば、ネット世代の気持ちも、旧世代の気持ちもわかる、新旧融合型のコミュニケーションスタイルというのが必要になてくるのかもしれない。
「今思い起こしてみると、昭和最後の10年間、80年代ってのはすごくいい時代だった。そりゃ、子どもながらにたいへんなことはいろいろあったけど、なんだか世の中は明るくて、「未来」をけっこう明るく思い描きながら、僕らは毎日をエンジン全開で生きていたんだ。」
80年代のおもちゃ、ゲーム、テレビ、遊び、文房具などをカラー写真で紹介するムック。30代後半から40代前半の人は、ああ、コレあったあったと楽しめる。アオシマやコスモスというマイナーメーカーの蘊蓄も面白かった。
ゲーム&ウォッチ、ファミリーコンピュータ、LSIゲーム、ルービックキューブ、ポケットメイト、人生ゲーム、野球盤、スライム、ウォーターゲーム、なめ猫グッズ、ゲイラカイト、学習ノート、多機能筆箱、チョロQ、ミニ四駆、ガンプラ、ゾイド、ビックリマン、うまい棒、キン肉マン消しゴム、ゲームセンターあらし、ひょうきん族...。
オークションや復刻版で入手が可能なモノもある。読んでいて気がついたのが、80年代の子ども向けブームというのは圧倒的に男の子主導だったのだなあ、ということ。誌面には魔法少女クリーミーマミとかバービーとか女の子向けの商品は僅かしか紹介されていない。上のリストを見ても男の子系ばかりである。理由はメディアに仕掛けられたブームに踊らされるのが男の子ということなんではないかと考えられる。そして男は大人になっても、この本みたいな懐古メディアを買ってしまうのだ、きっと。
・ゲームロボット21
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/12/21.html
・ゲームロボット21
・ザ☆歌謡ジェネレーション
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1014.html
・『8bit年代記 』『ピコピコ少年』
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/8bit.html
プレゼントを摸した表紙装丁が目を引いて手に取った。
重いテーマを軽い文体で書く現代的なノリに、メタレベルの仕掛けでひねりを加えた娯楽性の高い恋愛小説。たった一人の愛読者のために命を削って作品を書く作家というモチーフが、Side:Aでは男性視点とSide:Bでは女性視点で、転調しながら繰り返される。ちょっと泣ける、重たくないのを読みたい人向け。
そしてこの小説は原稿を書く仕事をしている人に特におすすめ。
作家志望の女性は、誰にも見せたことがなかった自作小説を、会社の同僚男性に密かに読まれて、心をレイプされたかのようなショックを受ける。しかし作品に対して"作家殺し"な褒め言葉を言われると思わず頬が緩む。愛読者には冷たくできない。細かなところで、物書き特有の心理描写がとてもリアルに描かれていて、そういうのってあるあると共感する個所がたくさんあった。
Side:Aの完成度が高くて単体でも良い恋愛作品だ。Side:BはAの話をネタにして、不思議な展開に読者を引きこんでいく。この話どうなっちゃうんだろうと読ませる仕掛けが満載の実験的作品。
『イニシエーションラブ』とか好きな人にもいいかも。
話すこと、書くこと、伝えることの基本要素を整理する教科書的な新書。感情や意志の伝達の原理と効果的な方法論を教える。
コミュニケーションには効率性と効果性のふたつの面があるという話が面白かった。
「伝達には効率と効果が大事である。ここで効率は量の問題で、これは費用と時間で計られるものである。費用も時間もかからないのが効率的な伝達手段である。たとえば、会いにいって要件を済ますより、メールで済めば費用も時間も少なくて済む。つまり、効率がいい。一方、効果は質の問題で、これは伝達目的がどのように達成されたかで計られるものである。メールで用事が済んでも、相手の感情を害してしまったら、メールでの伝達は効果的ではなかったことになる。」
効率性では電子メディアは最高のメディアである。瞬時に何百人でも何千人にでもメッセージを送り届けることができる。しかし電子化効率化の時代だからこそ、わざわざ訪ねてきてくれるとか、花を送ってくれるとか、会食に招待してくれるとか、非効率なメディアは非効率であればあるほど、感情的に伝わる部分が大きい感覚がある。メールで済むのにわざわざという価値が相対的に上がってきたように思う。時代錯誤の「血判書」で大きな商談を成立させた現代の経営者の話を思いだしたが、非効率で効果的を狙うのもひとつのテクニックである。
話し方では、やっぱりこれだなとしみじみ思ったのが、
これから何を話すかを話す(序論)
内容(中身)を話す(本論)
何を話したかを話す(結論)
という序論、本論、結論の組み立て方。これは私も長年のプレゼン経験で、なにか特別な狙いがない限りはこの方法がベストだと、たどりついた結論と同じだ。序論で本論の目次を予告することで聴衆は長い話を聞く受け入れ態勢ができるし、最後で繰り返すことで、ちゃんと聴いていなかった人も、一応聴いていたことにできる、それって重要である。話す側にしても、最後に何を話して終わるかを悩まなくてもよくなる。
コミュニケーションの要素を棚卸して、何が自分に足りないかを考えるてがかりをくれる一冊。
「相撲取りが大食するように、精神を使って仕事する作家のような人間には、多くの快楽が必要と思います。私自身、人から快楽主義者といわれるような生き方をしてきました。」
故団鬼六の自伝的快楽主義論。腎臓が悪化して透析を拒否した75歳のときの著書。その後3年生きて今年の5月に78歳で永眠。才能に満ちたアウトローの無軌道人生はなんとなく知っていたが、本人の口から詳しく語られると、ゴクリと唾をのむ迫力。大学時代に仲間に大金を借りた相場に失敗して東京へ逃げ、ストリップ劇場の照明係として働くが、小説を書いたら一儲けすることができ、新橋で酒場を経営するも失敗して、再び夜逃げ。神奈川県の三崎の中学教師になって結婚する。落ち着くかと思いきや官能小説の執筆依頼にこたえているうちに、その道の第一人者となっていく。
「教師時代に「花と蛇」を再開することになる、それまでの花巻京太郎のペンネームを団鬼六に変えたのですが、別にペンネームにこれという意味はありません。団令子という女優が好きで、下からいくと昭和六年生まれの私、これからは鬼みたいになって団令子みたいな女を犯しまくる、といったところになりますか。」
教師時代には授業を自習にして教室の机で「花と蛇」の連載を書いていたという。
かつての恋人・愛人遍歴を実名を関係者含めて赤裸々に語る。何が不倫とか変態とかもはや一般の通念は通用しない。そもそも団鬼六は、学生時代に友人に彼女を寝取られるのだが「そして、このとき、私が感じたことは女性に口説きや振る舞いは必要ではない。一発、先にやってしまった方が勝ちだということです。 山の中でたった一発、セックスしただけで山田は私が四年間も真面目な交際を続けていた菊江の気持ちをかっさらっていったようなものです。」とここらへんに屈折の原点があったみたいだ。
快楽主義のむちゃくちゃな人生だが、文筆やプロデュースの才能があったため、団鬼六の人生は、作品への高い評価や有名人との交友による華やいだものになっていった。幸せな人だなあと思う。
2010年には団鬼六賞というのが創設されていて、第一回は団鬼六のSM小説の流れを組むバスガイド作家の作品『花祀り』が大賞を受賞している。追悼にと読んでみたが、いやー、これは文学というより完全に官能小説だった。『花と蛇』の流れはこの賞の周辺で受け継がれていくのかもしれない。
「第1回団鬼六賞 大賞受賞作 京和菓子をモチーフに男と女、女と女が綾なす至福の官能小説。 京都に息づく秘めやかな悦楽・・・。 「濡れ場が手段になってはいけないと思うんです。目的であってほしいなと。ここを一番書きたかったんだ、という。その面では、『花祀り』の花房さんはこれを書きたかったんですよ、ヒヒオヤジたちに犯されていくところを」 ―重松清・選考座談会より― 「官能小説っていろいろ書き方があると思うんですが、エンドレス、団先生の『花と蛇』みたいに永遠に終わらないというのが面白い。独特の世界。この『花祀り』も、終わらない感じがあるでしょう」 ―高橋源一郎・選考座談会より― 「シットリ系エロの中で適度にバランスがよかったんですよ、濡れ場の配置が。官能としては、完成度はいいなと思いました。」 」
アレクサンドロス大王の家庭教師だった哲学者アリストテレスは、プラトンの弟子で、プラトンはソクラテスの弟子だった。ソクラテスはギリシア哲学の源流だが、彼自身は著作を残しておらず、弟子のプラトンらが、その思想を後世に伝えている。
ソクラテスはちょっと空気の読めない人だったようだ。
同時代の賢者と呼ばれる人たちを訪ねては問答して、彼らが無知を暴いて回った。そして彼らが無知であることに無自覚であるのに対して、自分は無知であることを自覚しているから、自分の方が優越していると人々に説いた。その結果、怒った賢者たちによって「ソクラテスは善良な市民を惑わす教えを広めている」と告発され裁判にかけられる。自業自得な気がするが、死罪が求刑の法廷で被告人が答弁したのが『ソクラテスの弁明』である。
私は無知であることを知っているから賢者であるという思想や、自分は貧乏だがそのことこそ私が清く正しいことの証明だとか、死を逃れるよりも悪を逃れることの方が難しいぞなどと反論をするが、高所からの物言いが、裁判感や陪審員に気に入られるはずもなく、死刑が確定してしまう。
実はこの死刑はソクラテスが牢屋から逃亡すれば、容易に逃れることができるものだった。そこで親友クリトンが牢に行って脱獄しなさいと勧めると、国法を守って死ぬことの正しさを滔々と語った。それが併録されている『クリトン』だ。結局、死ななくてもよかったのに、頑固なソクラテスは信念に殉じて毒を飲んで最期を遂げたといわれている。
スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/100-4.html
この本がきっかけで読んだわけだが、
"出発の時間になりました。これから私たちはそれぞれの道を行くことになります。私は死に、みなさんは生き続けます。どちらがよい道なのかは、神にしかわかりません ─── 「ソクラテスの弁明」紀元前399年、ギリシアのアテネで(プラトン著「ソクラテスの弁明」より)"
の文脈がよくわかった。
・パブリックスピーカーの告白 ―効果的な講演、プレゼンテーション、講義への心構えと話し方
元マイクロソフトの開発者で『イノベーションの神話』の著者で、現在はプロの講演家として活躍するスコット・バークンによるプレゼンテーション実践術。特にIT業界にありがちなパワーポイント・プレゼンの改善点がたくさんみつかる。
著者が示した「よい準備」
1 講演のタイトルに対して確かな立場を示す
2 目の前の聴衆について注意深く考える
3 具体的な論点をできるだけ簡潔に表現する
4 知的な専門家の聴衆からのありえそうな反論を知っておく
「何が要点で、聴衆の注意を向けたものからどのような洞察が得られるのかに対して、意識的であってください。」
自戒含めて我が業界でよくあるのが、目の前の聴衆の反応よりも、準備したスライドを消化することを優先してしまう一方的なプレゼンだ。しかもそのテーマがコミュニケーション、インタラクティブ、ネットワークだったりするのだから性が悪い。
偉大なスピーカーはどうしているのかというと「マーク・トウェインやウィンストン・チャーチル、フランクリン・ルーズベルトは皆5つか6つの論点(多くの場合、一つの論点についてほんの二語、三語)を書いた短いアウトラインを備忘録として使い1時間に渡る演説をしていました。あらかじめ充分に考えていれば、あなたの脳が必要とするものは短いリストだけで、話すことのほとんどは自ずから行われていくものなのです。」。キーワードを与えられたら、自動的にひとつのストーリーを話せるくらいには準備をしておくべきだし、専門家ならそれが当たり前だということ。
そして、こんな話もあった。
「スライドや配布資料などの衣装をすべて脱ぎ捨てれば、講演は親密で偽りのないものになります。単純にアイデアを持つだけの人間になります。これが何千年もの間、行われてきた姿です。スライドや小道具を使うコメディアンがほとんどいないのにはもっともな理由があります。そのような道具は聴衆とのつながりを築く妨げになる可能性があるからです。」
講演者がパワーポイントの資料を防護壁にしてその内側に閉じこもろうとする、その臆病さが、講演のライブ性を殺す、場の力を借りた創発を妨げる要因になっている。一切道具を使わないスピーチを練習するのがよいのかもしれない。
それから講演家へのフィードバックループが機能していないを指摘している。
「まったく拍手が貰えないようにするためには、いったいどれほどひどい内容にすれば良いのでしょう?そんな事態は見たことがありません。そして多くの人は拍手を良い結果の証拠だと見なすので、話し手はいつでも満足してしまうのです。ステージを降りて、友人に尋ねます。「どうだった?」返ってくるのは「良かったよ」という答え。そして以下同様というわけです。」
これは講演後にTwitterやブログに書きこまれる、見知らぬ参加者の評価を見るのがよいのだろう。そういえば最近こんなニュースもあった。
<ニコニコ動画>六本木に新施設「ニコファーレ」7月オープン 壁面モニターでコメント"体感"も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110522-00000013-mantan-ent
「ユーザーたちの「コメント」がモニターに表示され、来場者は360度取り囲むように流れるコメントを"体感"できる 」
ちょっとした恐怖体験でもあるが...究極のフィードバック空間だろう。
ニコニコ動画では、スピーカーの話す内容以外への突っ込みも多いものだ。聴衆は講演の音声だけを聴いているのではなくて、資料と本人を一体の映像として見ているということも、忘れがちなことだ。
非言語の重要性を調べるため著者が仕組んだ実験が笑えた。立派な風貌をして、権威ある話し方のできる役者を雇って、矛盾する内容と無意味な参考文献を挙げるデタラメな講演をさせたところ、多くの聴衆が高い評価を与えたというもの。
だから、
1 信頼度は主催者に依存している
2 外見は大切です
3 熱意が大切です
とのこと。
スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/04/100-4.html
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/08/-18.html
人を幸せにする話し方―仕事と人生を感動に変える言葉の魔法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1070.html
ブライアン・トレーシーの 話し方入門 ー人生を劇的に変える言葉の魔力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-838.html
・たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/cd-1.html
・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html
・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html
・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html
・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html
・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html
・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html
・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html
日本生まれの華僑である著者が中国料理の歴史を日本人にわかりやすく解説する。
私は世界の料理の中で中華料理が一番好きだ。では中華の何が好きなのかというと、あれも好きだしこれも好きだしと、バラエティに富んでいるのが、一番の理由だ。その多様性はその長い歴史と多民族融合の産物だ。
「北京料理は山東料理を元祖として、蒙古族やイスラム族など北京以北の民族の影響を多分に受けている。上海料理は、蘇州や杭州などを含めた近隣地方の料理をひとまとめにしたものだ。かつては中原地方と呼ばれた黄河、長江の河川沿いに広がる穀倉地帯にどっかりと腰をすえて、豊富な農作物を食材にしている。広東料理は亜熱帯地方独特の解放感から、野趣にあふれた豊富な食材と新鮮な海産物からなる。四川料理は対照的に、内陸部の乾燥した酷暑や玄関を耐えしのぶために、唐辛子や香辛料をふんだんに使っている。」
北京料理、上海料理、広東料理、四川料理の4大料理の説明をはじめとして、各地域料理の特色や名物を紹介している。歴史蘊蓄だけでなく、現代の食べ歩きにも役立つ中華料理の知識がたくさん見つかる。
たとえば、
人数プラス一品+スープを注文するのが原則
→これはいつも迷っていますが目安によいですね
一度食べ始めたら食べ終わるまで箸は置かない
→置いた箸をもう一度取り上げるのは意地汚い行為
接待で出された料理は少し残すのがお客のマナー
→食べきれないほどたくさんの料理を出すのがもてなし
中国人は量も重視しているから小さな皿に山盛りで出す
→いっぱいあるように見せる中国人の見栄
北京ダックは日本人は皮しか食べない、中国人は身も食べる
→北京ダックは皮しか食べないものと日本では教えられているような...嘘なのです
「酒家」は確実に広東系の料理店
→「南国酒家」いいですね
「清炒蝦仁」「紅焼海参」「青椒牛肉」など基本的に四文字の漢字で表わされる料理名から正確にどのような料理かを知る読み方を教えてくれる部分が勉強になった。
片=スライス、丁=賽の目切り、塊=ぶつぎりのような切り方や、
炒(チャオ)= 炒める
炸(ヂャー)= 揚げる
爆(バオ)= 強火で炒める
清蒸(チンヂェン)=下味をつけて蒸す
紅焼(ホンシャオ)=炒めて醤油味で煮込む
のような調理法、そして酸、甜(甘い)、苦(苦い)、辣(唐辛子の辛さ)、咸(塩からい)の味付け。数十の漢字と意味の対応を知っていれば、中国語メニューをかなり読み解けるらしい。
やっぱり恒川光太郎はいいなあとしみじみ納得の奇想短編集。どの話も、考えたこともないユニークな異世界設定へずぶずぶと引きずり込まれる体験ができる。
『風を放つ』
アルバイト先の先輩の彼女と秘密の通話をはじめてしまったぼく。彼女はいう。「あたし、恨んだ相手を殺せるんだ」。
『迷走のオルネラ』
義父からの虐待によって歪められた少年の心が生み出す戦慄ダークファンタジー。
『夜行の冬』
冬の静かな夜に聞こえるシャランという鈴の音と雪を踏む音。「夜行」様が来る。
『鸚鵡幻想曲』
この世界の奇異な印象のものを解放して回っているという謎の男アサノには「擬装集合体」を見分ける力があるという。
『ゴロンド』
不思議な生物ゴロンドは、池の中の半透明の膜を破って、広い世界へと生まれ出た。
連続しない5つの話があるが、1話ずつだんだんと異世界度が上がっていく。冒頭の『風を放つ』は完全に現実世界の話とみなせるが、最後の『ゴロンド』は完全に異世界の話である。私は現実と異界の真ん中に位置する『夜行の冬』が一番しびれた。
・草祭
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-894.html
・秋の牢獄
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-776.html
・雷の季節の終わりに
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/11/post-489.html
世界の所得分配ピラミッドの底辺40億人、世界人口の3分の2は1日8ドル未満で暮らしている。一人ひとりの収入は少なくとも合計すると年間5兆ドルの所得がある大国となる。この人々を援助の対象とはとらえず、消費者であり生産者であるとみなすことで、現地に持続可能なビジネスを創出できれば、未来の大きな市場となる。
これは国連開発計画(UNDP)の「包括的な市場育成イニシアチブ」調査報告書の日本語版。
1 貧困地域におけるビジネスチャンスと5つの課題
2 BOP市場での事業の成功を導く5つの方法
3 さまざまな業種における、示唆に富む17の事例
という構成で"インクルーシブビジネス"のチャンスを語る。
(1)基本的なニーズへの対応、(2)生産性の向上、(3)収入の増大、(4)エンパワーメント、サポートの方法は大きく4つが設定され、これらの方向性でさまざまな取り組み事例が紹介されていく。中国の貧しい農民のためのコンピュータを開発してソフトとセットで配る。インドの不可触民のために衛生的なトイレをつくる。ケニアの貧困層のために携帯電話で電子マネーの融資を可能にする。南アフリカで低所得者向け教育ローンを提供する。メキシコ人の出稼ぎに住宅建設をサポートするための送金サービスを提供する。などなど。
「貧困は多面的だが、その核心は機会の不足だ。インドの経済学者アマルティア・センの言葉を借りれば、価値があると思える人生を選べないことだ。機会の不足を引き起こしているのは。お金や資源の不足だけでなく、資源を使いこなす能力の不足だ。つまり、健康でないこと、知識や技術が足りないこと、差別を受けていること、社会的に排除されていること、インフラへのアクセスが限られていることなどのせいで、貧困層の人々は自分の持つ資源を活用して機会に変えたくても変えられない。自らが良いと思う選択肢を選べないのだ。」
どうやって貧困層において持続可能なビジネスを生み出せばいいのか。イマージョンという手法が興味深かった。イマージョンとは貧しい村に長期滞在して住民との信頼関係を築き、本当のニーズにもとづくビジネスモデルをつくりあげる手法のこと。
「インテルやモトローラやノキアは「ユーザー人類学者」あるいは「人間行動研究者」を雇っている。彼らは潜在的顧客の中に入り込み、いろいろなサンプルインタビューをして、製品につけたら喜ばれそうな機能は何かを調べてリストアップする。ニューヨークタイムズによれば、携帯電話が家族や隣近所の人たちの間で共用されているという人類学者の研究成果からヒントを得て、ノキアは最大7つのアドレス帳を搭載した携帯電話を生産し始めた。」
貧乏に慣れた長期旅行者いわゆるバックパッカーをイマージョンのリサーチャーとして教育したら面白いことになるのではないだろうか。
世界を変えるビジネスの入口を探している人におすすめの内容。
友人のいしたにまさきさんと松田ぱこむさんの共著。
デジタル化情報整理術というタイトルですが、実は内容の8割は「自炊」の本です。もちろん独り暮らしのお料理レシピではなくて、積み上がった書籍を自らの手でスキャナーにかけてデジタル化する方の自炊です。
持っている本、雑誌、名刺、書類のすべてをデジタル化して、PCやケータイからいつでもアクセスできるようにしたいと思う人におすすめの本です。自炊に取り組む人にとって、非常に実践的で、ノウハウの詰まった内容になっています。
本や雑誌の綴じ部分を断裁して、スキャナーでデジタル化する。おすすめのスキャナー、断裁機の紹介や、スキャナー付属ソフトの使い方、作業を円滑に進めるためのポイントなど、極めて具体的です。
実は、具体的過ぎて何のことかわからない記述もいっぱいありました。製本によって異なる断裁方法、スキャナーの読み取りモードの設定法など、そもそもどのような問題が起きるのか、私は知りませんでした。だって私は一度も自炊をしたことがないのですから。
じゃあ、なぜこの本を紹介するのかと言うと、
「第7章 その道の"プロに聞く"デジタル化スタイル」
で、私なりのデジタル情報整理に対する考え方を5ページほど寄稿させていただきました、ということなのです。デジタル化をどう仕事やプライベートに活かしているか、手放せないアプリと使用方法、うまくいかなかった情報整理術や使わなくなったデバイス、情報のインプットアウトプットのマネジメント法などについて書きました。
自炊にかなり興味があって、おまけとして私の5ページが気になる方、ぜひ一冊レジへお運びください。よろしくお願いします。
不倫主婦の求めに応じてコスプレ・セックスに励む高校生斉藤卓巳の話で始まって、卓巳をおいかける女子高生の視点、不妊に悩む不倫主婦の視点、高校の先生の視点、アルバイト先の先輩の視点など、卓巳の周辺をめぐる話でぐるっと一周する構成。第一話の『ミクマリ』が第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞して、二話以降が続編へ発展していったという経緯を持つ連作短編集。
登場人物たちは変態性欲だったり、不妊症だったり、貧乏だったり、複雑な家庭事情を持っていたりで、それぞれの葛藤をかかえている。危ういバランスの上で平穏な日常生活が営まれている。そこへ卓巳と主婦の行為が暴露されて波紋が広がっていくことでドラマが生じる。
登場人物たちは心に闇の部分を持っているけれども、それぞれが精いっぱいに生きていて、共感できる部分が多い。きれいごとだけじゃないからリアリティがある。普通って何だろうか。メディアが正常と異常を分けているだけで、現実世界では、誰しも少し異常で歪んでいるのが普通なのじゃないか。
ちょっぴり、情けない、みっともない、ふがいないのが本当の人生。
業の深い人間のドラマが、自然分娩を勧める助産院の周辺で起きるという設定もまた、力強い生の肯定へとつながっていく。過激な展開が多い割に、まっとうに励まされたような温かい読後感。
チェルノブイリ原発の事故に際して書かれた食物の放射能汚染に関するガイドのアップデート新装版。原発事故が起きたら食に対してどのように対応すればいいのか。
著者は高木 仁三郎(タカギ ジンザブロウ)
「1938年生まれ。理学博士。核化学専攻。原子力の研究所、東京大学原子核研究所助手、東京都立大学理学部助教授、マックス・プランク研究所研究員等を経て、1975年「原子力資料情報室」の設立に参加。1997年には、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。2000年 10月8日に亡くなるまで、脱原発を貫いた市民科学者。」
放射線がどの程度人体に悪い影響を及ぼすのかは、専門家の間でも大きく違う。この本でも紹介されているが、権威ある機関や専門の科学者の出した数字を並べると、
■ガン死の危険率(1万人・シーベルトあたりのガン死数)
国際放射線防護委員会(ICRP) 100
BEIR III 報告 77~226
ロートプラットの評価 800
ゴフマンの評価 3700
放射線影響研究所(1998) 1300
ということで最小と最大では40倍くらいの大きな開きがあるのだ。そして小さな方の数字をベースにして、現在の日本の基準値は設定されているということは覚えておかないといけない。
「ヨウ素-131に関して、日本の防災対策で採用されている制限値は、牛乳1リットルあたり6000ピコキュリー(約222ベクレル)、野菜1キログラムあたり20万ピコキュリー(約7400ベクレル)、飲料水では3000ピコキュリー(約111ベクレル)ときわめて高い(90ページ参照)。 西ドイツ連邦政府がチェルノブイリ事故直後採用したヨウ素-131の制限値は、野菜1キログラム当たり250ベクレル、牛乳1リットルあたり500ベクレル、西ドイツのヘッセン州では、牛乳1リットルあたり20ベクレルを制限値として採用している。」
国際的にみると日本の防災対策で採用されている制限値は高めなのだ。しかも外部被曝については1989年に一般人の年間許容被曝線量を5ミリシーベルトから1ミリシーベルトへと引き下げたのに、なぜか内部被曝の基準値は370ベクレル/キロに据え置いた。本来はこの基準値も5分の1にしないのはおかしいと著者は訴えている。
チェルノブイリ事故の際には食については自衛することが重要だという結論が書かれている。「興味深いのは、食生活に気をつけた人(汚染の高いものを避けた人)と食生活に気をつかわなかった人の汚染度の差が歴然としていることだ。」として西ドイツのハンブルクでの調査結果が示されている。
じゃあ、どういう食べ物に注意すべきなのか、一覧表や対処法が詳細に書かれている。
チェルノブイリ事故の際に、放射能汚染の検査でひっかかった食物は香辛料・ハーブ・きのこがワースト3、そしてヘーゼルナッツ。きのことナッツはセシウムを取り込みやすい。香辛料やハーブは取り込みやすいのに加えて乾燥、濃縮させるから高い汚染値になるという。
動物では最も高く放射能汚染されたのは淡水の魚類であった。スウェーデンの湖に棲むスズキ科の淡水魚バーチからは、チェルノブイリ事故から2年後に最高82000ベクレル/キロが検出されている。湖は雨によって運ばれるセシウムの吹き溜まりになっていた。
チェルノブイリ事故では国境を越えて被害が及んだ。1300キロを超えた地域でも高汚染地域があったくらいだ。当時のヨーロッパは大混乱に陥った。
「国によって、また同じ国内でも地域により汚染状況は大きく異なったが、基準値の設定をめぐる各国政府の放射能への対応は、それぞれの国の体制や原子力政策に対する姿勢が反映された。しかし、ほとんどどの国にも共通していたことは、「人体への影響はたいしたことはない」と国民の不安と混乱をおさえるのに懸命だったことだ。」
蓄積しやすい食材、気をつけなければならない食材はこの本に一覧で紹介されている。最近は食材の宅配サービスなどでは独自に放射線を計測して出荷している業者もある。健康被害も風評被害も最小限にするには、正しい情報をベースに食に対して行動することだ。「危ない」、「いや大丈夫」。書き手の立場によって、現状への判断はどちらもありえるが、専門家の書いた本を複数読んで、消費者が正しいと思うものを選び、自己責任で判断するしかない。
・SpaceSniffer
http://www.uderzo.it/main_products/space_sniffer/
WindowsPCのハードディスクの占有状況を分析するツールはいっぱいあるが、分析に時間がかかるものが多くて、こまめにチェックするのには面倒だ。このSpaceSnifferはとても高速にディスクの利用状況を精査する。私が普段使っている465Gのディスクで8秒で完了している。
ディスクの中身は陣取りゲームのようなマップで表示される。下位ディレクトリの内容を何段階下まで表示させるかは選ぶことができる。ファイルは種類に応じて色分けすることができる。
色分けはユーザーが設定を追加できる。これによって簡単な業務内容の分析もできるかもしれない。不要なファイルはこのアプリから削除することができる。
2004年くらいからOverdiskを使っていたが、こちらに乗り換えるかも。
ハードディスク容量不足の解決支援Overdisk
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002305.html
ウクライナ系アメリカ人ジャーナリストによる長年のチェルノブイリ訪問取材をまとめた渾身のルポタージュ。ロシア、ウクライナ、ベラルーシにまたがる原発事故の地の意外な真の姿がわかる。
視覚的にはチェルノブイリは死の街などではない。
「ところが事故の十年後の1996年に初めてチェルノブイリ地区を訪れると、驚いたことに、いちばん目につく色は緑色だった。このときの取材記録を見ると、「原野」や「森」や「野生生物か!?」などの語句を下線で強調したり、丸で囲んだりした説明がびっしりと書きつらねられている。通説や想像とうらはらに、チェルノブイリの土地は独特の新しい生態系に生まれ変わっていたのだ。悲愴な予言などものともせず、ヨーロッパ最大の自然の聖域として息を吹き返し、野生の生物で満ちていた。動物は、思いもかけず魅力的な棲みかとなった森や草原や沼と同様に、放射性物質ですっかり汚染されている。しかも、誰もがあっけにとられたことに、繁栄してじもいるのだ。」
かつての原発周辺の地域には、ジブリ・アニメのナウシカの世界のような「不自然な自然」「意図せぬ自然公園」が広がっている。もともと森だった土地だけでなく、放棄された耕作地も、現在は森になっているのだ。車も少ないので空気も新鮮で、放射能汚染地帯と言う事実を知らなければ、素晴らしい自然環境にみえる。高レベルの汚染場所は、枝ぶりのおかしな松の木が生えている「赤い森」でわかる。放射性核種が木に固定された森では、火災が発生すると燃えて舞いあがり、汚染を拡げるので、現在は森林火災に注意をしているという。
高レベルの汚染地域では放射能によって枯れる植物はあるが奇形の動物はいない。遺伝子は丈夫にできているとか、遺伝子を破壊された個体は淘汰されるとか、放射線に強い個体が生き延びたという説がある。理由はともかく動物天国だ。そこらじゅうを野生化した家畜が走り回っている。イノシシに気をつけないといけない。
避難地区は無人ではなくて結構な数の「サマショール」と呼ばれる居住者がいる。元の暮らしを求めて戻ってきてしまった高齢の人たちだ。長期的な被曝の住民への影響はどんなものだったのか?。チェルノブイリ事故ではその影響で数千人が癌になったと考えられるが、同じ時期に癌は同じ地域で別の要因でも増えているために、二十年もたってから特定の癌を事故と関連づけることが難しく、影響はうやむやになっているのが現実だ。
ただひとついえるのは、当初の悲観的な予測ほど白血病や癌は増加しなかったらしいということ。事故直後の子供の甲状腺癌が増えた以外は、80万人を超える除染作業者でも増加がみられていないという。しきい値なし仮説の確率的影響は絶対値としては大きくなかったようなのだ。
もちろん不透明な部分は残される。こうした統計をややこしくする社会的要因がある。数十種類もある"チェルノブイリ手当"を受給するために、実際には作業をしていなかったのに、手当を要求する人が少なくないこと。実際にはそうではないのに、病気になったのは事故のせいだと思い込んでいる人も多いことなど。
要するに犠牲者の数は未だによくわからないのである。
この統計の誤差の向こうにうやむやにされる死者数というのは、日本の原発事故でも同じことが予想される。もともと日本の死因のトップが癌であり、全死因のおよそ3分の1を占めるといわれる。つまり原発事故がなくても33%は癌で死亡する。人口の高齢化が急速に進んでいるので、画期的な治療法が発明されない限り、ベースとしての癌の死亡率は数パーセントは増える。いや下手をすると数十パーセントは上昇するかもしれない。そんな中で原発の影響に起因する死者が1%とか2%増えたとしても、本人も医者も区別ができないのである。原因がわからなければ補償もされないだろう。低レベル放射線の長期被曝に対しては、自衛するしかないということかもしれない。
豊かな自然環境の描写、管理地域(ゾーン)に暮らす人々との交流と和やかな記述が続くが、常に人々は線量計をつけている。原発そのものは依然として強い放射線を出している。20年前に作った石棺は劣化し始めており、目下、新しい防護施設の工事中だという。
映画化もされた「姥捨て山」モノの傑作。「龍秘御天歌」の村田喜代子。
押伏村では60歳になった老人を蕨野という丘へ送る。粗末な小屋でひと冬を過ごせるかどうかを試す。ちょうど60を迎えるヌイは仲の良い嫁に、村の秘密の掟を教える。
「ヌイよい。 弱え年寄はワラビ野にては、命保たぬなり。かならず死に尽きて有るやちよ。このようにして六十の齢のジジババを、ふるいにかけて選るなり。命強く生きる年寄は残し、弱え年寄は早々に逝かせるべしよい。六十の関所と申すはこのことにて有るやち。 数年に一度くる凶作はどのようにしても免れずば、若え者、小児の糧をばワラビのジジババの命と替えて養わんか。昔からの押伏の知恵はこの法なり。されば他村に秘し、里の内の若え者等にも明かさずにきたるやち。」
ヌイよい。
お姑よい。
と互いへの呼びかけですべてのパラグラフが始まる。
現実には接することができない嫁と姑の、テレパシーのような魂の往復書簡のなかで明かされる9人の老人の生きざまと死にざま。社会の限界と可能性と両方を明らかにする寓話的な物語。
この作品は辺見庸が解説を書いているが、チェルノブイリの話がでてきて驚いた。
「それは、ウクライナはチェルノブイリ原発二、三十キロ圏の、立ち入り禁止区域となっている村でかつて出会った年寄りたちである。見渡す限り無人の雪道で、なにかの影のように蹌踉として歩いていた。それが『蕨野行』の風景に重なって見えるのだから妙なものだ。1986年の原発事故でいったんは住民の全員が疎開した。ところが、どこの疎開先も物価高で、一家の生活がままならない。老人は若者より放射能の影響が少ないと信じられている。で、子供や孫と離れて、千年は住めないといわれる立ち入り禁止区域に老人ばかりが続々戻ってきた。実質的な口減らしである。彼ら彼女らは、外国から食料援助が届いても食べずに、疎開先の孫らに送っていた。放射性物質が濃く漂う空の下で、細々と汚れた畑を耕し、緩慢な死を待つ。が、夜ともなると、自家製酒を飲み交わし、自棄ともまがう活気を呈するのである。」
姥捨て山は伝説だが、これは現実で恐ろしい。
・デンデラ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/10/post-1095.html
棄てられた老人集団が村を襲撃しようとするデンデラもよかったですが。
複数の写真を1枚の画像にまとめて見せたいことがよくあります。定番アプリは Dipticがありますが、これに加えて、よりクリエイティブなPhotoshakeも絶賛オススメです。これでこの価格は安いです。
iPhoneで写真をレイアウトしてアートにする Diptic
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/iphone-diptic.html
Dipticは整列させるのに適しています。
まず複数枚の写真をカメラロールから選択するか、新たに撮影します。この際にFlickrやFacebookにアップロードした写真からも選択ができます。また位置情報を取得して現地の地図を画像として追加することもできます。
MultiPhoto, SinglePhoto, InstantPhoto, GridPhoto, WidePhoto, WallPaper
の6つのテンプレートがあり、自由自在の写真レイアウトが可能。
写真をテンプレートの必要点数選んだら、自動的に写真がレイアウトされます。ここでiPhoneを振ると別のデザインが生成されます。気に入ったデザインができるまで、振り続けます。
作成した画像を投稿するShare機能も充実しています。
Twitter, Facebook, Flicker, Tumblr, Picasa, Blogger, MeToday, Wordpress, Posterous, FC2, Naver, Tistory, Egloos, MySpace
に投稿することができます。
アーティスト名を入力すると、関連するアーティストを教えてくれるアプリ。
たとえば、松田聖子で検索すると、山口百恵、サザンオールスターズ、工藤静香、小泉今日子、薬師丸ひろ子、ピンク・レディーが関連アーティストとしてでてきた。精度はまあまあだろうか。だいたい同じ世代の、同じジャンルのアーティストが出てくるように思った。音楽ダウンロードへのリンクも表示されるので、すぐ購入も可能。
関連するキーワードのYoutube動画や、ブログ記事も表示される。本当にそれが探しているアーティスト、曲なのかどうかを確認するのに便利。以前はiPadアプリだったが、最近、iPhoneでも使えるようになった。レコード屋でiPadは広げにくいのでよかった。
時は2036年。20年前のお台場原発事故で東京は放射能汚染され人間が住めなくなっている。封鎖された街の生存者を救助するため、自衛隊は特殊部隊コッペリオン部隊を派遣した。遺伝子操作によって放射能に耐性を持った新人類コッペリオン(女子高生)は、廃墟と化した街の中で、謎の敵対勢力と戦いながら、生存者を救出する。
「シーベルト」「石棺」「セシウム」など原発事故関係のキーワードが頻出する。3.11後の現在では、見方によっては相当に不謹慎な内容だが、連載は2008年開始なので
福島第一とは何の関係もない想像力によるもの。
内容は、超能力を持った女子高生が、放射能で汚染された東京で繰り広げるドタバタアクション。現在も漫画は連載中。アニメ化も決定していたそうだが、被曝による悲惨な死も出てくるので、ちょっと難しいかもしれない、か。作者の苦悩は深そうだ。
コッペリオンは遺伝子操作で放射能耐性をつけるというが、放射能は遺伝子を破壊してしまうから、現実には難しいのではないの?と思ったが、実は放射能をものともしない生物って現実にいるのですね。
体長0.5ミリから1ミリのクマムシはなんと5700シーベルトを浴びても生存可能。
・クマムシ・ゲノムプロジェクト
http://kumamushi.net/
クマムシは、空気も水もない所で、マイナス150度、プラス150度の高温低温下でも生存可能な脅威の生物で、その遺伝子を解析すれば、何か役立つことがわかるのではないかというのが、ゲノムプロジェクト。
・マンガでわかるWebマーケティング ―Webマーケッター瞳の挑戦
Web担当者フォーラムの人気漫画が書籍化。
これは一社に一冊置いておいたら良いと思うおすすめ本。
Webマーケティングの基礎知識を、漫画とわかりやすい解説文章で身につけることができる。新入社員や新任のWeb担当者には必読レベルでおすすめ。一人前の人でも部下に教えるためのヒントとして役立つ、部下に読ませた方が早いけど。
大手インターネットマーケティング会社のアソシエイトコンサルタントの三立 瞳(26)が、大手住宅メーカーのネット戦略コンサルティングを受注する。一癖も二癖もあるクライアント担当者を相手に、トラブルや人間関係の幾多の苦難を乗り越え、キャンペーンを成功に導くため奮闘する日々を描く。漫画は全9話。
第1話は「PVだけでいいんですか」。PVが伸びさえすればいいんだといいきるクライアントに対して何も言えなかった瞳。キャンペーン開始後に、PVは伸びたがコンバージョンは壊滅的な数字で、コンサルの責任問題となる。
PV,UU,CVR,KPI,LPOなどWebマーケティングとマネジメントの基本用語が自然に理解できるようになっている。マンガを五分楽しく読んで詳細な知識は、解説文章を10分読むことで学べる。飽きずにテンポよく学習できる教材。
漫画自体が作画もシナリオもハイレベルで、話の続きが気になるために、マーケティングの基本は理解している読者でも、ついつい最後まで読んでしまう、読まされてしまう魅力がある。
著者はネット黎明期にWebマーケティングのコンサルティング会社で働いた後で、現在はTSUTAYAのWebマーケティングディレクターを務める人物。ネット戦略コンサルティングの受注側と発注側の両方を経験しているだけに、互いの立場の葛藤や陥りがちなコミュニケーションの罠をよく知っている。現場でありがちなシーンが続出するので、リアルにコンサルタントの処世術まで学べてしまうのがお得。
Webマーケッター瞳の挑戦のシーズン2が楽しみ。
凄く面白い5つ星の新書。
十字軍の戦士が身につけた十字架の記章を起源とし、日本では「薩摩琉球国勲章」を嚆矢とする勲章とその制度は、実はそれを運用する法律がない。明治の勅令や太政官布告によって運営されている。諸事情と経緯を背負った不思議な制度である。
日本では春と秋の叙勲で約4000人ずつ、高齢者叙勲、死亡叙勲、外国人叙勲、気兼業務従事者叙勲、緊急叙勲を含めると受勲者は年間2万人を超える。対象は「国家又は公共に対し功労のある者」。最高位の大勲位菊花賞頸飾の下に、総理大臣ら政治家や公選職、民間人系の旭日大綬章、公務員系の瑞宝章の2系列があり、それぞれに重光章、中綬章、小綬章、双光章、単光章と続く。国家・公共にとっての功労とは何か。2003年の改革で勲一等のような数字による等級区別は廃止されたが、その度合いが等級によって序列化されるしくみにかわりはない。だから受賞者をみれば典型的な旧体制の価値観が勲章授与のありかたからみえてくる。
過去には政治家、官僚、軍人に偏っていたが、昭和になってから文化勲章による文化功労者への授与も広がった。必死の「運動」をしてまでも、名誉の勲章を欲しがる経営者もいるそうだが、あからさまに人間をランクづけする制度として批判や辞退者も少なくない。
この本に引用されている勲章制度に対する人々の意見を私が気になったものだけ抜き取って、時代順で並べてみる。
「現在子供の世界はまさにワッペンに明けワッペンに暮れるばかりのありさまです。この流行におくれをとってはならぬとばかりにりっぱなおとなたちが叙勲を急ぐありさまは、童心に返ったほほえましい姿」石橋政嗣衆議院議員(社会党) 1964年
「文化勲章と言うのは、家が貧しくて、研究費も足りない。にもかかわらず、生涯を文化や科学技術発展のために尽くした。そういう者を表彰するのが本来のやり方とは違うのか?」昭和天皇 1971年ごろ
「世論の反対の前に民主的な栄典法をつくることができず、いまなお明治八年の太政官布告に基づいて行われていることや、その叙勲が、かつての天皇の臣下にたいするごとく、政治家や官吏が高い階等を占め、黙々として働く一般の国民には低い回答しか認めないことなどは、天皇の前にひな段の格差をつくることであて、それはひいては復古的な天皇制の空気を生みだすことにつながりやすい」朝日新聞社説 1976年
「それにしても勲章の如きものに人は何故かくも執着するのか。真に世の為、人の為に陰ながら尽くした人々を顕彰するは結構なることなれど、既に功成り、名遂げたる高位、高官の物欲しげなる態、誠に見苦しきものなり。これを見れば、大体その人の器量は解るものなり。」 細川護煕 元首相 1993年
「政治家や官僚に比べ歌手や俳優、落語家など芸術分野で活躍した人に十分報いていない。美空ひばりや石原裕次郎が勲一等にならないような制度はおかしい」亀井静香 自民党政調会長 1999年
批判は常にあるが、一方で叙勲を受けた人たちが感激と喜びを感じていることも事実。国家としてはカネをかけずに功労者に報い、国家への貢献インセンティブをうみだすことができるおいしい制度という側面が強い。だから世界のほとんどの国に勲章制度は存在する。
この本では、日本の勲章制度の全貌、歴史、そして批判と改革の方向性が詳しく解説されている。勲章制度というマニアックな切り口だが、意外にもそこから、国民の名誉欲とそれを利用する国家システム、日本社会の本質的価値観が立ちあがってくるのが面白い。
「切腹」「殉教」「かたき討ち」も日本人を知る上でいい切り口だったが、勲章も同じだ。
・切腹
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/10/o.html
・殉教 日本人は何を信仰したか
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/post-1199.html
・かたき討ち―復讐の作法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-814.html
有楽町にあるドコモスマートフォンラウンジで、本をテーマに毎月一回トークイベントを主宰しています。今月もたくさんの本とネットの話題をお話したいと思います。
このラウンジは多数の未来のコミュニケーションツールに触りまくり、試しまくり、で一見の価値ありの場所です。スマートフォンの未来を体験しがてら、私のセッションものぞいてください。よろしくお願いします。
■日時
2011年 5月26日(木曜日)19:00~20:00
■場所と参加申し込み
有楽町にあるドコモスマートフォンラウンジ内イベント/セミナースペース
http://www.dcm-spl.com/cool_events/2011/02/-passion-for-the-future-offline.html
Webから参加の予約することができます。実は当日ふらっと参加も可能ですが、予約していただけると大変うれしいです。モチベーションになります。
■イベント概要
『ザ・本とインターネット』 ソーシャル読書セミナー
(Passion For The Future オフライン)
本とインターネットとどうつきあうか。それで人生が変わります。
IT起業家で書評ブロガーの橋本大也氏が、"今月の面白い本ベスト10"や、電子書籍やWebの最新事情を語ります。年間500冊超の読書生活で発掘してきた名著・奇書の書評のライブ・トーク。ひとりで本屋に行くより、気になる本がきっと見つかるセッションです。さらに未来志向で、パソコンやケータイ、タッチ端末など先端テクノロジーがもたらす読書スタイルや出版文化の変容も考えてみようと思います。
構成:
1 自己紹介とごあいさつ
2 今月読んだおすすめ本
3 今月のテーマ本
4 デジタル読書生活向上委員会
講師紹介
橋本 大也 データセクション株式会社 取締役会長
2000年、大学在学中にインターネットの可能性に目覚め、株式会社データセクションを設立。現在、ITコンサルタント・起業家として数社のITベンチャー役員を兼任すると共に、大学等で教鞭をふるっている。主な著書は「情報力」「情報考学―WEB時代の羅針盤213冊」「新・データベースメディア戦略」「アクセスを増やすホームページ革命術」「ブックビジネス2.0」ほか多数。
株式会社早稲田情報技術研究所 社外取締役
株式会社日本技芸 社外取締役
株式会社メタキャスト取締役
デジタルハリウッド大学 教授
多摩大学大学院経営情報学研究科 客員教授
これは抜群に面白いのでおすすめです。
死者がゾンビになって人間を襲う謎の疫病が、中国奥地で発生して世界中へ感染を広げた。ゾンビに襲われた人間もまたゾンビになっていく無限増殖に、人類はほとんど滅亡直前まで追い込まれた。しかし、残された人類は不屈の精神と決死の作戦の展開により形成は逆転する。長い戦いの末にゾンビとの戦いに遂に勝利して、再び文明社会を構築し始めた。人々はその戦いをWorld War Zと呼んだ。
World War Z後には戦争の正史として「国連戦後委員会報告書」がまとめられた。編纂委員の一人は最終版を読んで、事実とデータのみが残され、戦いに関わった人々の心の葛藤や感動エピソードなどの人間的要因がすっかり削られていることを残念に思った。彼はもうひとつの人間的な歴史書を書くために、世界各国の兵士、政治家、実業家、主婦、オタクなど幅広い人たちに、World War Z当時の個人的な体験談を聞きとった。この作品は報告書であり、100人を超える個人の回顧談が時系列で並べられている。およそ数ページの聞きとり取材記録で全体が構成されている。
ディティールの積み重ねが圧倒的リアリティを生み出している傑作といえる。
著者のマックス・ブルックという作家は、本作以前に「ゾンビサバイバルガイド」というゾンビが大量発生したらどうしたらいいかの詳細マニュアルを書いているゾンビオタクである。世界各国のあらゆる立場の人間が、ゾンビ出現に対してどのように対処するか、リアリティをもって記述できたのは、数千時間に及ぶであろう妄想の蓄積があったからに違いない。
ブラッド・ピットが映画化権を獲得して制作中であるとのこと。本書では100人のインタビューであり、100回くらい視点が変わるわけだが、映画ではどう構成されるのかが非常に気になるところ。
レトロ化ここに極まれりといった感じの徹底的な映像加工アプリケーション
8ミリカメラはiPhoneのカメラの映像に、8ミリの映像が経年劣化したかのような処理をリアルタイムに施すことができます。
レンズは5種類クリア、ちらつくフレーム、スポットライト、光漏れ、カラーフリンジング。そして 粗さ、変色、ダストが異なる5種類の時代からのフィルムを選ぶことができる。1920、70s、Sakura、XPro、Siena。フィルムカメラ好きならピンときますね。音声も凝っていて、映写機のサウンドを追加したり、消音かマイクのみを選べます。
撮影中にジッターボタンを押すと、画面がランダムに上下に動きます。
制作した映像はカメラロールに保存、Eメール転送、YouTubeにアップすることができます。
アート的な映像を制作することができるわけですが、実は飲み会とか片付いていない部屋とか、普通に高解像度で撮影すると"見苦しい"場面も、レトロ化すると"味がある"場面に見えたりするから不思議です。
22年前(1989年)に描かれた漫画の緊急復刻版。
劇画タッチで、当時の原発の光と影というか、光は少し、ひたすら闇を暴く。
若い女性記者が、権力による隠ぺい圧力に抗しながら、原子力発電の闇を明らかにしようと奮闘する物語。原発の危険性や歪んだ利権構造、事故隠しを含む現場の隠ぺい体質など、次から次へと問題がみつかっていく。
ポケット線量計、フィルムバッジ、アラームメーターの三種の神器を渡されて、日給8000円で働く労働者たちの作業風景が、今は少しは改善されているのだろうが、生々しくて恐ろしい。原発→元請け→下請け→孫請け→ひ孫請け→末端。大金が動く。ピンハネで儲かる。末端の人集めでも2,3年やれば家が建つとうそぶく手配師、そして反社会的勢力とのつながり。
作者は1974年から約10年余り新聞記者として日本の原発に向き合ってきた人物。だからこれは主に実話に基づく内容。福島、宮城、福井、静岡の原発を「尾行や脅迫に抗しながら潜入・徘徊・取材を重ねてきた」とまえがきに書いている。
週刊誌の見出し的なショッキングな暴露ネタも多いが、作者いわく「被曝作業、技士の死、原発下請け労働組合の結成、密告、極秘の『原発立地地点計画書』のスクープなども、そのままではありませんが、基本的に事実にもとづいています」とのこと。
復刊にあたって作者らが長文のメッセージを寄せている。
米国の調査会社が発表した2011年の世界の10大リスクのトップは「Gゼロ」。グループ・オブ・ゼロ、世界的な指導者の不在を意味する。「世界の大国が内向きになり指導力を発揮しようとせず、国際機関も十分な役割を果たせず機能不全に陥る。その結果、経済不振となる」というシナリオ。日本経済新聞社の論説副委員長が書いた。
グローバル視点で混沌とした時代のゲーム盤を読み解けば、オセロで相手の駒をいっきに自分の色に塗り替えるように、勝者と敗者の入れ替えを起こすことができて、日本にも経済復活のチャンスがあるという力強い提案本。
著者は「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざリ ぢっと手を見る」の俳句になぞらえて経済活動をとりまく環境条件の悪さを「啄木の世界」となづけた。一方で「カネは天下の回りもの」、自らの才覚で成功をおさめる世界を『日本永代蔵』になぞらえて「西鶴の世界」と呼んだ。
「交易条件の悪化を「啄木の世界」、企業の努力による純輸出の拡大を「西鶴の世界」と呼ぶとすれば、肝心なのはどちらの要素が勝っているかだ。ひと言でいえば、06年までは純輸出額の拡大が交易条件悪化を埋め合わせていた。 だが07年半ば以降は「啄木の世界」が勝っているといえよう。もちろん、その試練は新エネルギー開発やエネルギー効率の向上を促すことで、オセロゲームのように新たな「西鶴の世界」の幕を開く可能性がある。最も有望なのは電気自動車であろうが、ここしばらくは日本にとって「啄木の世界」が続くことを覚悟しておくべきだろう。」
グローバリゼーションの勝ち組・負け組をわけるのは、個々の国や企業の努力というよりも、オセロのルール上で有利な手を売っているかどうか。その見極めるポイントをいくつか解説している。
たとえば一人当たりGDPの増加に伴い消費支出が爆発的に伸びる「スイートスポット」にあたる中国やこれからの成長が見込めるBRICs諸国の市場。アジア、新興国の内需拡大に合わせて家電や車を売り込めれば勝ち組になれるが、お隣韓国が日本を急速に追い上げてきているという。
この本を読んで日本のチャンスとして面白いと思ったのがコンビニの輸出だ。セブンイレブンは日本に12925店あるがタイには既に5660店も出店しており、業界売り上げトップで毎年200から400店ペースで拡大しているそうである。コンビニが受けているというのは、日本的なライフスタイルが受けているということでもある。
「食事やサービス、家電製品、アニメから音楽まで日本をまるごと売りこむ。いわば日本の生活様式を輸出する形で、消費を「外需化」することが重要な戦略目標になってくる。こうした好循環を起こせれば、国内の雇用の増加にも役立つのは間違いあるまい。」と著者は書いている。
新幹線や原発、水道インフラを輸出するよりも、こうした商売のインフラを売った方が、その先にあるアニメやゲームを含めた文化の市場までおさえることができて面白そうである。
国内経済については、生産年齢人口が減り、高齢者人口が増える高齢化社会の問題を分析している。日本の家計金融資産の64%(811兆円)を60歳以上が保有している。このうち一人住まいの高齢者の保有分が235兆円もあるという。将来が不安で死ぬまで金を持ち続ける「強制貯蓄」状態から、一人暮らしの高齢者をいかに解き放つかが課題であると。ああ、オレオレ詐欺に代わる合法的なビジネスということですかね。
日本経済復興のヒントがいろいろ詰まっていそうな論考集。
小さな子供にキーボードを覚えさせるのに最適かと思って発売日予約購入。
次々に現れるポケモンの名前をタイピングさせるNindendoDS用のゲームで、Bluetoothキーボードが付属している。
難易度はキーボード初体験の子供でも、上級者の大人でも楽しめるようになっている。ゲームを達成すると優秀成績にはメダルが与えられる。大人のパソコンユーザーにとって銅メダル獲得は簡単なのだが、金メダルは相当の熟練者でないともらえない。
ポケモンが出現してから名前がローマ字表示されるまでには短いラグがある。この間もキーボード入力は有効なので、ポケモンの名前を知っているプレイヤーはかなり有利になる。これはよく考えられた仕様だなあ。
私の子供(小学2年生)は2週間毎日遊んでいるが、ローマ字入力ならキーボードを打てるようになった。
この付属キーボードは、よくできている上に、なんと
1 iPhoneの「設定」でBluetoothをオンにする
2 キーボードの「Fn」を押ししながら、電源スイッチを入れる
3 認証キーが表示されるので入力すると使えるようになる
という手順を踏むと、iPhone/iPadでも利用することができる。こどものおもちゃではないのだ。
日本語入力にするには、ホームボタン(家のマーク)とスペースキーを同時に押して、日本語を選ぶ。使い勝手はとてもよい。DSを立てる台はiPhoneでも利用できる。子供がゲームに飽きたら私がもらう予定。これは買いです。
写真ネタを加工するのに便利なソフトウェア。
ツイッター時代には、画像が単体で独り歩きすることが多くなった。テキストによるアノテーションを付与できたブログ時代に比べて、ツイッター時代は画像自体が説明的でなければならない宿命をおった時代と言えるだろう。まあ、そんなに大げさにいわなくてもいいのだが。
iPhotonは、
1. モザイク...モザイクで写真の見せたくない部分を覆う
2. テキスト...写真を説明するためのテキスト
3.スポットライト...写真の一分だけを明るくして目立たせる
4. 矢印...写真の一部を指し示す矢印を表示する
5. レンズ...写真の一部分を拡大するレンズ
などの機能がある。
ちなみにこの写真は、
・ハンバーグ大魔王
http://www.colowide.co.jp/brand/east/brand.php?brand_no=130
です。最近ハンバーグが牛肉100%に変わりました。ファミレスの変化球みたいな家族連れが気軽に入れる店です。
加工した写真はアプリ内からツイッターやメールへ投稿することができる。