津波災害 減災社会を築く

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・津波災害 減災社会を築く
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災害研究の第一人者が書いた津波への備えと対策。被害を最小に抑える「減災」の視点から、津波という現象の分析と、発生した時に私たちがとるべき具体的施策が示されている。島国の日本人ならば全員が読んでおくべき内容。この余震は10年続くともいうから。
付箋をつけて気になった個所。

M6以下あるいは震源深さが100キロ超なら「津波の恐れはありません」
50センチの津波でも0.3トンの力が働いて、転倒して流される
津波によって砂浜を引きずられると摩擦で火傷をすることもある
2メートルで浮いた家具が天井に当たり家全体を浮上させ押し流す
第一波より第二波が2倍大きい可能性
1分から3分、震度6で揺れたら、津波が来ると素人判断してOK

東京が3メートルの津波に襲われると、32000人が犠牲になるという計算が示されている。地下鉄水没の危険性はこの本ではじめてきがつかされた。

「東京メトロおよび都営地下鉄の駅の中で、ゼロメートル地帯あるいは江戸時代に湿地帯や海中に位置していたことになる駅は約70を数える。これらのどの一駅から地上の津波はん濫水が地下空間に侵入しても、70の駅どころか、ほかの駅まで水没する危険がある。」

地震に対して地下は安全といわれるが、その後の津波に襲われると恐ろしいことになる。真っ暗な地下鉄に濁流が入ってくる。水門などの対策があるらしいが、水没の可能性もありえるそうだ。東京湾中等潮位上の高さを利用者に知らせる努力が必要である、と著者は提言している。

ところで、任意の地点の標高・海抜ならば、地図サービスのMapionで、調べたい場所を右クリックすると表示される。自宅や会社や利用駅について、自分で調べて一覧表を手帳に入れておくとよいと思う。私は既にそうしている。Mapionは、2点間距離の計測機能もあるので、海岸線からの距離、最寄りの原発からの距離なども調べられて便利である。

・Mapion
http://www.mapion.co.jp/

災害経験を地域で語り継ぐことの重要性も強調されている。

「一般に、津波の碑は、そのときやってきた津波の最高到達地点に置かれている場合が多い。徳島県や高知県に残っている津波碑の大半がそうである。したがって、それらは市中にあるより山際などの人目につかないところにひっそりと建っている場合が多い。先人が私たちに伝えようとしていることをもっと謙虚に活用する知恵が求められている。」

津波の碑には先人の知恵が書いてある。過去の津波被害の状況や、船に逃げるな、神社の前を通って山へ逃げろ、毎年この碑の字に墨を入れなおせ、などのアラートが記述されている。こういう情報は、GPS機能のついた携帯でも見られるようになるといい。

先人の知恵がいっぱいあるということは、津波とその被害は何度も繰り返すという宿命を意味している。三陸海岸などの津波多発地帯では昔から、

津波→高地に住民が移転→不便→10年で元の場所に戻る→津波

というパターンを繰り返しているそうである。今回も高所移転が計画されているが、それ以降の動きを見ていかないと、被害も繰り返してしまうことになる。

本文中に「津波の大きさを低減させるには、湾口の大水深部に津波防波堤を作るのが一番効果的である。岩手県の釜石市や大船渡市は際立って安全になっている。」という記述があった。残念ながら、二つの市は「一番効果的」だった防波堤も、むなしく壊滅的ダメージを負ってしまったことになる。1000年に一度の地震だから仕方がないのだろうか。

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このページは、daiyaが2011年4月21日 23:59に書いたブログ記事です。

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