緊急改訂版 〔原子力事故〕自衛マニュアル
「あなたと家族を原子力災害から救う50の方法」
1999年刊行の書籍をベースに福島第一原発事故の情報を踏まえて加筆修正された内容。
インターネットで、原発災害関係の情報を収集していると、いろいろな情報が見つかりすぎて、逆に何が基本だったかわからなくなる。コンパクトに緊急時の対応がまとめられているガイドブックで知識を整理できる。事故発生を知ったら?、退避のしかた、避難場所での生活、被曝から身を守る、事故に備えて、など。50項目が1事項について見開きで簡潔にまとめられている。
たとえば自衛で大切なのは被曝を避けるということだが、全身への予測線量が10ミリシーベルト以上なら、建物の中に退避する。50ミリシーベルト以上なら遠隔地に避難する。このとき、
場所の違いによる被曝の差(ガンマ線の場合) 低減係数
屋外 1.0
自動車内 1.0
木造家屋 0.9
石造り建物 0.6
木造家屋の地下室 0.6
石造り建物の地下室 0.4
大きなコンクリート建物 0.2以下
(扉および窓から離れた場合)
自動車や木造家屋は退避しても被曝をよける効果がほとんどない。コンクリートの建物の奥深くや地下に逃げられればベスト。
内部被曝で気をつけるべきは、
1 牛乳
2 穀物や野菜、特に葉っぱもの
影響が出やすいのは牛肉より牛乳、葉っぱものは直接放射性物質を浴びるので危険。
被曝の人体への影響も簡潔にまとめられている。低線量被曝の影響は多くが晩発性なのが恐ろしい。影響が明らかになるのが白血病で被曝から6~7年後、ガンで被曝から数十年後と言われる。
「たとえば1万人の人が1シーベルトの被曝をしたとします。このとき、やがて発生するガン死者の数は、アメリカの科学アカデミーの場合は500人、日本の放射線影響研究所は1700人としていました。あるいはアメリカの科学者ゴフマンは、4000人としています。 研究機関によってこれだけバラつきがあるのは、まだはっきりしていない部分もあるからです。たしかに、被曝とガンの間には数十年の時間の隔たりがあるのですから、関係を特定するのは容易ではないでしょう。しかし、けっして無関係ではないということは共通の認識です。」
原子力施設の周辺にいない限り一般人が1シーベルトを浴びることは考えにくいが、どこまで低線量なら大丈夫なのかは明らかになっていない。浴びても必ずガンになるというものではなく、一定の人数の内の何人かという確率的な影響。ただし10歳の少年の方が50歳よりおよそ150倍もガンで死ぬ確率が高くなる。避難時の行動は、子ども中心に考えるべき、という。
東日本の人間は、今回の事故で放射線に対する知識はかなりインストールされているように思うが、日本は原発だらけの国なので、他の地域の人は、これを機会にこの本などを開いて備えてみては。
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