自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解
・自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解
これからのエネルギー政策を考える上でまとまった論考で参考になった本。
次世代の自然エネルギーとしてイメージ先行の風力・太陽光よりも、日本の地理にあった水力・地熱発電が有望というオピニオン。現状では風力に太陽光やその他の再生可能エネルギーを足しても、国内エネルギー供給全体の0.2%に過ぎない。いくら推進政策をやったところで、風力も太陽光も大きな比重を占めるには至らないのではないかというデータがならぶ。
たとえば風力の発電施設の規模に対して、火力は2835倍、水力333倍、原子力2300倍もある。風力の平均設備利用率は20%程度に過ぎないし、大規模な風車の立地は限られてしまう。太陽電池は高コストの上に年間の日照時間が少ない日本は向いているとはいえないのだ。
一方で、山がちで雨や雪がたくさん降る日本は、水力発電には絶好の条件がそろっている。火山地帯であるから地熱発電も向いている。推進していくべきは推力と地熱の方ではないかと著者は他のエネルギーとの比較の上で結論する。
2009年の電力調査統計によると、
総出力:約2億3700万キロワット
火力 :約1億4300万キロワット
水力 : 4500万キロワット
原子力: 4900万キロワット
でそうだ。
再生可能エネルギーの活用、現在あるエネルギーシステムの改良(効率向上)、徹底した省エネ化というのも説得力がある。一定の出力を続ける原子力に、火力と水力が電力需要が少ない時間に運転調整を頻繁に行うことで需給バランスを整えている。火力の設備利用率は50%以下が多いそうだが、震災後は原子力発電分が減って火力の割合が高まるのは間違いなさそうだ。火力の発電効率を数パーセントでも高めるイノベーションは、影響が大きい。そのほか、補助金より炭素税・環境税によるエネルギー政策の転換をという意見もあった。
自然エネルギーの可能性はよくわかるが、現状1%に満たない自然エネルギーを10年や20年で、主力の代替にするのは現実的には難しいのではないか、とも思える。それより既存の発電効率の1%の改善に、数兆円を投じてみる方が賢いのではないだろうか。日本のエンジニアはドラスティックなイノベーションよりも、小さな改善が得意なような気もするし。
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