放射能で首都圏消滅―誰も知らない震災対策
週刊誌みたいな扇情的タイトルだが、現在の福島第一の話ではなくて、出版は2006年で浜岡原発の話。まさかの緊急重版。
今後30年間の東海地震(M8クラス)の発生確率は87%(2006年算定)。静岡県御前崎市に建つ浜岡原発(活断層の真上)が、地震の影響でメルトダウンする危険性は非常に高いとし、その場合、200キロの距離にある首都圏が高濃度の放射能によって致命的に汚染されるだろうと、この本は警告する。浜岡原発の建設設計に関わった人物による耐震数値捏造や構造欠陥を指摘する内部告発も収録されている。
福島第一原発では、原子炉自体はまだ爆発しておらず、低レベルの放射能の拡散にとどまっているが、もしも緊急停止が働かずにメルトダウンを起こして爆発した場合には、極めて深刻な事態が予想されるようだ。京大・原子炉研究所の助手によるシミュレーションでその規模が示されている。
浜岡最大の4号炉が爆発して、放射能が風下の首都圏を襲った場合で、がんによる死亡者数は191万人に及び、もしも5機の原子炉がドミノ倒し的に次々と爆発した場合には、830万人が死亡すると予測している。チェルノブイリでは半径320キロに避難勧告が出ており、600キロ離れた距離でも人が住まないほうがいいレベルに汚染された土地がある。浜岡にはチェルノブイリの1000倍の放射能があるから、万が一には「首都圏消滅」ということになる。
事故が発生した場合の避難方法についても詳しく書かれている。首都圏に放射能が届くまでには6時間かかる。首都圏の場合は荒川の西側にいる人は逃げ出せる可能性が低いから屋内退避で1週間閉じこもるしかないとアドバイスしている。
文科省と経産省が作成した原発の耐震性の資料を見ると、ダントツで浜岡原発が地震に弱いことがわかる。浜岡もまた津波対策が不十分という指摘もある。この本の首都圏消滅という被害規模のシミュレーションはどの程度正しいのかは不明だが、地震と津波によって現実に福島第一が放射能漏れを起こした。それよりも危険だと多くの専門家が指摘する浜岡原発は、できるかぎり早い時期に運転を止めるべきなのではないだろうか。
福島第一以前では、反原発のプロパガンダ本として、見向きもしなかったであろう本だが、危機が現実になった今読むと、説得力があって、恐ろしい。
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