なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力
・なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力
問題解決力と問題発見力は別物。
ケネディ政権で国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏は、ハーバード・ビジネススクールで行った講義の中で、MBAのケーススタディは役に立たない。なぜなら学生に何が問題なのかを教えてしまうからだ、と言った。
解決すべき問題が何か、なかなかわからないことが現実の問題なのだ。
原題は"Know What You Don't Know. How Great Leaders Prevent Problems Before They Happen"(あなたが知らないことを知りなさい 偉大なリーダーたちはいかにして問題を未然に防いだか)。自分の知らない何かに常に注意を向けること、自分が何を知らないのかを追求し続けること、それがリーダーの問題発見力の基本だという。
「効果的に問題を見つける7つの行動」として、
1 フィルターを避ける
2 人類学者になる
3 パターンを探す
4 点を結びつける
5 価値のある失敗を奨励する
6 話し方と聴き方を教える
7 ゲームの録画を見る
が挙げられ、それぞれに一章が割かれ詳しく解説されている。たとえば第一章では、
「フィルターを避ける」ための5つの手法として、
・自分の耳で聴く
・さまざまな意見を探して聴く
・若い人とのつながりを持つ
・周辺部にも足を伸ばす
・利害関係者でない人と話す
という具体的な方法レベルまで語られる。人の上に立つリーダーになればなるほど、フィルターを通して状況を把握することになる。だからこそ意識的に、組織の外にある多様な情報、生の情報に意識的でなければならない。ソーシャルメディアに触れるというのは、手軽な方法である気がする。
リーダーの陥りがちな失敗も事例がいっぱい紹介されている。「価値のある失敗を奨励する」の章ではサンクコストの過ち(損失を取り戻そうとしてますます深みに落ち込む)が語られる。音速ジェットのコンコルドプロジェクトは有名なケースだ。
「かなり早い段階で、このプロジェクトは金銭的に成功する実質的な見込みがないことが明らかになった。英国とフランスの政財界のリーダーたちは、あと一歩のところでプロジェクトを中止しそうになった。けれども、過去に支出した莫大な金額が「無駄遣い」になることをおそれて継続の道を選んだ。最終的にコンコルドの開発費用は当初予算の500%を超えた。この投資はいかなるプラスの金銭的リターンももたらさなかった。」
ビジネス、政治、軍事、スポーツ、医療など各界のリーダーたちの意思決定の成功と失敗から、要点が抽出整理されていて読みやすい。不確実な状況の到来、組織のリーダーにとって危機管理、意思決定がとりわけ重要な時代になった。今読む本だと思う。
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