停電の夜に
「臨時の措置、と通知には書いてあった。五日間だけ、午後八時から一時間の停電になるという。天候が落ちついてきたので、吹雪でやられた箇所の復旧作業をするらしい。停電といっても、この道筋だけのこと。静かな並木道になっていて、ちょっと歩けばレンガの店先が何軒かならび、市電の停留所もある。夫婦が暮らして三年になる。」
アメリカの計画停電の話。
若い夫婦ショーバとシュクマールの住むマンションで、午後8時から1時間の停電が5日間続くという知らせが届いた。大学の研究者である夫と教育図書の校正をする妻。二人の関係は、子供の死産以来、冷めきっていて、家の中でも顔を合わせることが稀だった。
停電を機会に二人はロウソクを灯して向かい合い、一夜に一つずつ、お互いの秘密の打ち明け話をすることにした。夫婦の関係を修復するはずだった夜の会話の試みは、しだいにきわどい部分へと立ち入っていく。
上質な大人の海外文学Liteという味わいで楽しめる短編集。アメリカに住むインド人女性の視点で語る作品が多い。デビュー作にしてO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞受賞作。
ジュンパ・ラヒリが気に入ったら映画『その名にちなんで』がおすすめ。
「ニューヨークとインドを舞台に、異文化で生まれ育った子供に、親から与えられた"名前"にまつわる涙と感動の物語」傑作ですよ。
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