伏 贋作・里見八犬伝
江戸を舞台に「伏(ふせ)」を狩る猟師の妹 浜路と兄の浪人 道節、そして贋作 里見八犬伝の作者 滝沢冥土の活躍を描く。桜庭一樹の最新作。東京大阪新幹線の往復で470ページを一気読みした。
伏とは、犬の血を引く魔物。見かけは人間そっくりで、普段は人間社会に紛れて暮らしている。身体の何処かに秘密の痣があるのが特徴。半分獣の伏たちは、野生の本能が目覚めると、凶暴に人を襲い、疾風のように去っていく。次々に起きる襲撃事件に、幕府は懸賞金をかけて伏退治に乗り出した。
里見八犬伝の著者の滝沢馬琴の息子、冥土が書く、もうひとつの八犬伝が物語に絡む。里見家の伏姫と不思議な白犬八房から生まれた因縁の一族が伏で、里見一族に伝わる正義の秘剣村雨が戦いの鍵を握る冒険活劇。本線はドタバタだが、サイドストーリーとして語られる伏たちの呪われた出自と暗い情念が魅力的。
桜庭一樹の赤朽葉家、私の男などの代表作と比べると、軽い語り口でスピーディに話が展開する。この作品はかなりの長編なのだが、ここから始まる壮大な物語のプロローグに過ぎないらしい。何十巻も続く漫画の原作っぽいなあと思ったら、現実にアニメ映画になることも決まっているらしい。アニメが成功すると、一般にはこれが桜庭一樹の代表作ということになってしまう、のかなあ。ファンとしてはちょっと複雑な気分である。解決していない伏線が多くあって、気になるので、続編が出たら読むに違いないのだが。
・赤朽葉家の伝説
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-611.html
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