白い薔薇の淵まで
中山可穂のレズビアン恋愛小説。すごく切ない傑作。
破滅指向の純文学作家 山野辺塁と、普通のOLのわたしが本屋で偶然に出会って恋に落ちる。社会のしがらみを忘れて、性愛の深みに沈んでいく二人だったが、どんなに身体を結びあっても、わたしは塁が心に闇の部分を隠しもっていることにきがつく。情緒不安定な塁と激しい喧嘩別れと復縁を繰り返しながら、やがてわたしは塁の哀しい過去を知ることになる。
女性同士の激しい嫉妬や乱暴。男女の恋愛とは違ったパターンで、行方が読めずにはらはらさせられる。常に不安定で欠けているから、より一層互いを求めあう。部屋に閉じこもって互いの白い肌を貪りあう彼女たちの姿を読んでいて、尾崎豊の「I Love You」を連想しました。「きしむベッドの上で優しさを持ちよりきつく身体抱きしめ合えば~」、あの曲みたいなイメージの小説です。
ベテランの円熟に与えられる山本周五郎賞受賞作。巻末に収録されている受賞記念エッセイが、作品と同様に素晴らしいので一読の価値ありだ。ウィットにとんだ文体で、受賞の喜び、創作の背景や著者自身の私生活が赤裸々に書かれている。作品の魅力を倍増させるオマケである。文庫版の価値おおいにあり。
花伽藍
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1254.html
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