強さと脆さ
全米で250万部突破の「ブラック・スワン」の副読本的なエッセイ集(ペーパーバック版のために書き下ろされた部分を日本で単行本化した)。「ブラック・スワン」を読んでいることを前提として書かれているので注意。ある種のファンブック。
本論に対して寄せられた反響に対してコメントをしたり、わかりやすいまとめ、新たな論点の提示などで構成されている。
「ブラック・スワンに対処するための9原則」
1 時の試練と、はっきりとは現れない知識に敬意を持つ
2 最適化を避ける。無駄を愛することを学ぶ
3 確率の小さいペイオフを予測しない。普通の事象ならその限りにあらず
4 起こりにくい事象に「典型的な姿」なんてないのに気をつける
5 ボーナスの支払いにはモラル・ハザードがついてまわるのに注意する
6 リスク指標は避けて通る
7 よい黒い白鳥か悪い黒い白鳥か
8 ボラリティが見られないのをリスクがないのと取り違えない
9 リスクを表わす数字を見たら気をつけろ
ブラック・スワンを読んでからずいぶん経つが、このリストで内容を思い出した。
・ボラリティや通常のランダム性を抑え込むと黒い白鳥に振りまわされやすくなる
・ボラリティが低くなった期間を、リスクが低くなった期間と見誤っている
・進歩はオプション性に絡むランダム性から生まれる(次の著書で詳しく書くらしい)
など、金融のみならず、安心・安全社会の陥穽への指摘が鋭いなと改めて思った。
ナシーム・ニコラス・タレブは、ブラック・スワンがベストセラーになったせいか、この本ではひたすら断言口調でしゃべりまくる。本論と比べて、根拠やロジックが弱い気がするが、その分、勢いのある、わかりやすい表現が多い。
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