二〇三〇年日本「不安」の論点
「あなたの20年後を想像してください」
産経新聞の長期連載を書籍化。
2030年。働く場所、ふるさと、家族、都市、日本はどうなっていくか。記者たちはさまざまな立場の230人に20年後の未来像を問いかけた。返ってくるのは全体的に悲観的な未来イメージにもとづく不安の声が多い。派遣労働者の嘆き、衰退していく農村、老朽化する都市。
次の時代に希望を持つという面では、世代間格差と世襲社会は特に問題だ。国会議員における世襲の多さが日本の現状を象徴している。
「父親や祖父が政治家である議員を2世、3世議員と呼び、選挙区をそのまま引き継ぐと世襲議員と呼ばれる。09年7月の時点で衆院議員の3割を世襲議員が占め、自公政権の幕引き役を務めた麻生太郎内閣では、閣僚18人のうち12人に上った。 日本大学の岩井奉信教授(58)=政治学=によれば、ブッシュ前大統領ら2台め政治家が目立つ米国でも、世襲議員は5%以下、英国も同様だ。議会制民主主義の国ではないが中国でさえ共産党幹部のうち「太子党」と呼ばれる高級幹部の子弟は3%という。」
私立の子は私立の学校に進み、医師の子は医師になる傾向が強い。東京大学に通う学生の家庭の年収は高い。一方で生活保護受給の世襲も比率も高い。人生の進路を自由に選択できるはずなのに、案外にそうなっていない現状がある。ピラミッドの底辺は流動化したけれども上層部は固定化している。これでは社会全体でのダイナミズムは得られない。
ではどうすれば?。この本、データに基づいて書く、具体的な声を拾い提示するということはよくできているが、創造的な提案はあまり挙げられていない。それは具体化した論点を読んで、読者が考えろということみたいだ。
これからの20年。人口とGDPの減少、国際経済における日本の順位の相対的下降は避けられないだろう。それはおそらくマインドの問題ではないから。しかしマインドで変えられる部分もあると思う。安心と安全が違うように不安と不安定も違うのだから。
世界3位だろうが4位だろうがまだまだ先進国で大国という事実に変わりはない。国民が幸福か不幸かというのは、大部分が個人の考え方、価値観が左右するものだろう。時代は古い価値観を満足させることができない方向へ向かっている。新しい価値観への転換が、真の意味での世代交代につながるのだと思う。
たとえば現在の就職難と言われる新卒市場。実は中小企業、ベンチャー企業は人を雇いたがっている。でも、大学生とその親の価値観が大企業志向のために、大企業に応募が集中していることが大きな原因だといわれる。50社も100社も落とされて、自分はダメな人間だと思ってしまうより、勢いのあるベンチャー企業へ行って、成長期のコアを担い、ゆくゆくは経営者になるという方がよっぽど面白い人生だと思うのだが。私の会社は常に優秀な人材募集中です。
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