SARU 上・下
『魔女』を読み五十嵐大介という才能を知った。これは最新作SFファンタジー漫画。
「1999年、7か月、空から恐怖の大王が来るだろう。アンゴルモワの大王を蘇らせマルスの前後に首尾よく支配するために。」ミシェル・ノストラダムス
ノストラダムスの大予言に登場する「アンゴルモワの大王」=斉天大聖 孫悟空=超常的パワーの破壊者という設定なので「SARU(猿)」。1999年の危機はとりあえず回避されたが、大王はこれから降ってくる、ということになっている。
恐怖の存在の復活を前に、バチカンのエクソシストが暗躍し、インカの征服者ピサロやフランシスコ・ザビエルらが蘇って、現代の主人公たちの前に現れる。キリスト教、ユダヤ教、中国の伝説、陰陽道など、世界の宗教や神話伝承が散りばめられて、独特の世界観をつくりだしている。終末的な世界を描いた絵が素晴らしい。
壮大な構想を上下2巻におさめたため、展開がちょっと急ぎ過ぎの感じと説明口調が多いのが惜しいところ。10巻位の長編で描きなおしたら傑作になりそう。なお、本作のSARUというテーマは、売れっ子作家の伊坂幸太郎と競作企画になっており『SOSの猿』という小説も出ている。
なんとなく中嶋らもの『ガダラの豚』を連想させる作品でもあった。
・ガダラの豚
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/06/post-762.html
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