帝国ホテルの不思議
帝国ホテル120周年。打ち合わせや宿泊で使う人、とても面白い本なのでおすすめ。
VIP担当の部署「プロトコール」
「国連のアナン事務総長をお部屋へご案内するとき、急に早足で私を追い抜こうとされるので、先導する役のプロトコールがうしろを歩くのはぐあいがわるいですから、あわてて抜かれまいと早足に(笑)。するとさらに早足で歩かれて、お部屋の前に到着したときに、「いい運動になったよ」と肩をたたかれました(笑)。」
電話オペレーター
「お客様ってほとんど、第一声にキーワードをおっしゃるんです。その最初のキーワードを絶対に聴き逃さないようにしないと。お客さまとの誤解があったりして何かのミスにつながるのが、最初のキーワードを聞き逃していたことにはじまっているっていうケースが多いんです。」
メインのレストラン「レ セゾン」
「外国の方は99%、コースを注文されないですね。前菜とメインディッシュ、あるいはスープとメインディッシュといったように、二皿なんです。コースで注文されるのは、ほとんど日本の方。」
というように、直木賞作家の村松 友視が、帝国ホテルのマネージャーやスタッフら30人にインタビューして、「さすが帝国ホテル」と言われる洗練サービスの秘密を探った本。
総支配人や施設部長、総料理長、ソムリエ、ベルマン、宴会チーフ、婚礼クラーク、靴磨き、ランドリー、フロント、ピアニスト、ブッチャー、氷彫刻担当、神主など組織のトップから末端まで全員が、高い意識で最高峰のホテルサービスを実現しようとしている様子がよくわかる。
ホスピタリティの最高峰と言うと、よくディズニーランドも取り上げられるが、帝国ホテルとディズニーランドの洗練は方向性が違うもののように思えた。ディズニーランドは完璧なマニュアルでアルバイトを教育する。テーマパークを訪れたファミリーはあらかじめ考え抜かれた対応に満足して帰る。それは主にレディメイドの洗練である。
だが、帝国ホテルにきてマニュアル対応に満足する大人のお客はいないのだ。だから帝国ホテルのスタッフはお客の顔を憶え、臨機応変に考えて、特別対応のサービスをする。正社員やプロフェッショナルとして長年の経験を積むから、オーダーメイドの洗練を高めていくことができる。
それぞれが帝国ホテルに入社した理由、新人時代のエピソード、思い出深いハプニング、サービスの秘訣、追究している理想、帝国ホテルならではのストーリーなど、インタビューの過程で引き出される情報も興味深いが、その声からスタッフひとりひとりの素顔が見えるのがいい。
・帝国ホテル 伝統のおもてなし
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004861.html
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