パレード
東京のマンションの一室で共同生活をする4人の若者たちの姿を描く。『悪人』の吉田修一、第15回山本周五郎賞受賞作。
会社員の直輝、自称イラストレーターの未来、学生の良介、恋愛依存の無職の琴美というバラバラの男2人、女2人が、2DKをルームシェアするという奇妙な生活空間。登場人物たちは狭い部屋で、互いを傷つけないように自分を演じて、表面上はわきわいあい、優しい関係を続けている。そこに男娼のサトルが加わり、5人の視点が1章ずつ交代で、彼らの共同生活の実態が立体的に映し出される。
居住者の1人の未来は、他の居住者も自分がそうしているように「この部屋用の自分」という仮面をかぶって暮らしているのではないかと思っている。だとしたら、この部屋には、この部屋用の自分が5人いるだけで、本当の自分は誰もいない、無人の部屋と言うことになるなあと内心、考えている。しかし、そんなことは居住者のだんらんでは口にせず、わきあいあいとした楽しい生活のパレードを続ける。
実はこの明るく楽しい共同生活には恐ろしい事実が隠されているのだが。
読み進むにつれて、なにかひっかかる感じ、小さな違和感が読む者の心の底に蓄積されていく。最後でその意味がわかって、つい読み返して再確認したくなる。
パレードは『世界の中心で、愛をさけぶ』で有名な(しかし私は『今度は愛妻家』(2009年)のほうがよいと思う)行定勲監督で映画化されている。最近DVDが発売された、というのが読書のきっかけ。さてDVDを観るか。でも筋を知ってしまったから忘却のため2年くらいおいておこうか、悩ましい。
・悪人
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-603.html
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