ガラシャ
来年の大河ドラマ『江 ~姫たちの戦国~』でも重要な役割を果たしそうな細川ガラシャの生涯を描いた小説。『花宵道中』の宮木あや子なので、官能的な恋愛小説かと思ったら、意外にも抑制が効いた歴史小説。フィクションもちょっと入ってますが、読みごたえあり。
明智光秀の娘で信長のすすめにより細川忠興の妻となった女性 明智(細川)玉子。父が起こした本能寺の変により、逆臣の娘として味土野山中に長期幽閉される。秀吉の世になって大阪に戻るが、夫の浮気や周囲の冷遇に苦しみ、密かにキリシタンに改宗してガラシャの洗礼名をもらう。関ヶ原の乱の直前に石田三成に屋敷を包囲されるが、人質になることを拒む。キリスト教は自殺を禁じているため、家老に自分を殺すように命じて、最期を遂げたと伝えられる。
玉子とそっくりの姿をした侍女の糸(芥川龍之介『糸女覚え書』)や、光秀の親友でガラシャの舅の細川幽斎(藤孝)の視点が重ね合わされて、非情な時代の中で、それぞれの叶わぬ恋や友情、神への愛を貫いた女たちの物語が語られている。がんじがらめの束縛閉鎖環境を舞台とする作風の宮木あや子は、この時代の不自由な女たちの描写にも才能を発揮している。
実はガラシャの物語としては異例の?ある種のハッピーエンドになっている。ガラシャが詠んだとされる辞世の句「散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ」も、それによって別のものに書き換えられている。そこらへんが評価が分かれるところかもしれないが、戦国時代の純愛物語として私はかなり好きだな。
・太陽の庭
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1137.html
・白蝶花
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-996.html
・花宵道中
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-936.html
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