蜜姫村
民俗系ダークファンタジーの大傑作。
昆虫学者の夫のフィールドワークに伴い、山奥の村にやってきた女医は滞在が長くなるにつれ、一見のどかに見える村に違和感を覚える。無医村なのに村人たちがあまりに健康で病気の者がひとりもいないのだ。医師を誰も必要としていない状況を不満に思いながら暮らしていると突然、夫が行方不明になる事件が起きる。夫を探すべく村に残る決意をした彼女は、やがて村の恐ろしい秘密を知ることになる。
因習に縛れらた山奥の村の祟り。テーマは民俗ホラーの定番だが、蜜姫なんて伝承は存在していないだろう。作者の創作のはず。とても設定の独創性が高くて新鮮であると同時に完成度の高い神話的世界観にぐいぐいとひきこまれる。ミステリ、人間ドラマ、群像劇、迫力のホラー描写と読ませる要素を一杯抱えている。乾 ルカは本当に素晴らしい才能の作家だ。
漫画で言えば、諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズとか、星野之宣の「宗像教授伝奇考」などが好きな人は間違いなくはまる。これを原作にしてマンガ化、映画化してくれないかなと期待。
今年読んだダークファンタジー小説では
・魚神 千早 茜
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/03/post-1181.html
月桃夜
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/post-1201.html
もよかった。今年はこの系統が豊作。
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