異形の日本人
「民俗学者宮本常一の代表作に『忘れられた日本人』がある。宮本は地方の田舎で昔ながらの生活を営む人々の中にこそ、本当の日本人の姿があるとした。 私はそれとは対極に、路地に住む人やそれと同じように異端とされた人々、タブーとされた出来事を通して、日本人の姿を見つめようと努めてきた。だからこれは宮本と違う意味で、ノンフィクションの書き手である私なりの「忘れられた日本人」ストーリーでもある。」
被差別部落問題ノンフィクションで大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したライターによる、マイノリティ視点の現代日本人論。偉人伝より異人伝の方がずっと面白い。有名、無名の6人の人生が語られる。
・類人猿のような姿態の"ターザン"姉妹
・差別を描いて封印された漫画家『血だるま剣法』平田弘史
・孤高のやり投げ選手 溝口和洋
・医師の猥褻行為と裁判で戦い続けた生涯を持つ女性
・股間から火を吹く芸で知られるストリッパー
・伝説の落語家 初代桂 春団治
日本はアメリカと比べると社会の異形に対する許容度がかなり低い国だと思う。規格を外れた人間を排除しようとする。現代になって部落差別は少し減ったかもしれないが、情報ネットワークが発達して、異形はネットメディアに晒されて叩かれる。異形に対する不安や嫌悪感は、多様性に対する恐怖が根っこにあるのだと思う。みんな一緒であることで安心を得る社会と、異形を取り込みながら成長していく社会。後者の社会に生まれていたらイノベーターと呼ばれたかもしれない人たちが、日本社会で生きにくい人生をおくっているレポートの本である。
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