奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」
サードマンとは極限状況下の遭難者の傍に現われ生きろと励ます謎の存在。生死のかかった登山、南極探検、北極探検、海底洞窟探検、漂流者、9.11テロ時の世界貿易センタービルなど、古今東西の奇跡の生還者たちの多くが、自分はサードマンに助けられたと証言している。彼らの証言は驚くほど似ている。危機に舞い降りるこの守護天使は何者なのか。
本書はオカルト本ではない。
正体不明のサードマンに若干のロマンは残すものの、基本的には脳のメカニズムに原因を求める。脳には人の気配を感じるスイッチがあり、それが押されると傍に誰かがいるかのように濃密に感じさせる機構があることがわかっている。
単調さ、孤独、睡眠不足、酸素不足など複数の要因が重なってこのスイッチがオンになるとサードマンは降臨する。この本にはサードマン体験の証言が多数収録されている。それはとても濃い気配の存在らしい。遭難者たちは長時間にわたってサードマンと苦難を共にする。コーヒーや食料をサードマンに分け与えようとした人がいっぱいいる。
「苦難のあいだにも最後には救われると信じる人の方が、救済者をよく体験する」そうだ。死にそうな時に救いの天使の幻覚を見ることで、生きる力を発揮できる人は、生き残りやすい。進化のプロセスで、ポジティブなサードマンを見る人たちが多く生き残ってきたということなのかもしれない。
瀕死の遭難者の前に現れる情け深い神のような存在。サードマンは昔から小説や映画でもしばしば描かれてきた。その正体がかなり暴かれる。前人未到の領域の科学的探究と、スリリングなサードマン体験談が面白い本だ。
・神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/08/post-258.html
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