ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命
梅田望夫氏とMIT教育イノベーション局シニアストラテジストの飯吉透氏によるウエブを使った開かれた教育=オープンエデュケーションの可能性に関する論考と対談。教育者が必読なのはもちろんだが、ITビジネスに関心のある人にもおすすめ。
梅田氏の本はよく読んできたし、進化論の信奉者なのだが、この本で遂に梅田3.0への進化を感じたのが次の一節である。米国で起きたことが日本に時間遅れで波及するという原則について語った部分。
ちょっと長く引用すると、
「しかし最近になって思うのは、「経済のゲーム」で牽引される娯楽(エンタテイメント)、メディア、ビジネス、コミュニケーション、生活の利便性向上(ショッピングなど)といった分野おおむねそうだと考えてよいのですが、どうも「知と情報のゲーム」については、これまで抱いていたアメリカ発「時間遅れ」普及仮説が働きにくい、ということなのです。
そしてそれは、「知と情報のゲーム」のけん引力となっている信念が、欧米の「表現の自由」「学問の自由」「教育を受ける権利」といった人権思想や民主主義思想、特にアメリカ建国以来の思想を強く踏まえてのものだからです。普遍を身にまとってはいても、この信念は欧米近代以来のイデオロギーそのものと言えます。ですから、「知と情報のゲーム」については、「アメリカで起きることは「時間遅れ」で他の国々でも起こるだろう」という仮説から離れなければならないと、いまは考えるようになりました。」
梅田氏は、かつて「ウェブ進化論」で自らが予言したような2.0化が日本で起きないことに「日本のウェブは残念」といって、日本のネットコミュニティで顰蹙を買ってしまった事件があった。その残念だと嘆いたのが、まさに例外の分野だったのだと思う。
オープンコースウェアの実態、教育向けのマネジメントシステム(しかもオープンソース)、オンラインの高等教育機関、メタユニバーシティとクラウドカレッジ構想、iPadの活用状況、など、多くが初耳の米国の教育の最新動向がびっしり詰まっていた。
オープンエデュケーションとは、オープンテクノロジー、オープンコンテンツ、オープンナレッジの3つの要素からなる。ウェブで教育資源を誰もが使えるようにすることで、いま起きつつある変革について書かれている。
世界の一流大学と同じシステムやコンテンツ、ノウハウが誰でも自由に使えるというのは、凄いチャンスだと思った。つまり誰でもウェブ上で大学のようなものを作れるということではないか(入学者がいるかどうかはともかく)。メーリングリストやSNSのグループを作る感覚で、個人が大学をボコボコつくりだしたら、ブログと一緒で珠玉混交だろうが、中には凄いのも現れるのではないか。
たとえばこの著者の二人による梅田・飯吉教育大学とかあったら入学してみたいなあ。
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