活字たんけん隊――めざせ、面白本の大海
本の雑誌編集長 椎名誠による読書案内本。
「たくさんの本を読んできた。作家の仕事をする用意なったのは、その読書の蓄積、それに感化されたやみくもな好奇に満ちたドタバタ的行動力ではないか、と自分では考えている。」
最初に書名を挙げてその本について批評する普通の書評とはスタイルが違う。日常の発見や旅行でのドタバタ体験についての面白いエッセイの中に、たくさんの本の紹介が散りばめられている。数ページの書評が何十本も続く書評本は頭の切り替えが必要で、読む側がつかれてしまうものだが、ベースがエッセイの名手椎名誠の文章だとどんどん読めてしまう。
実は欧米にはスリッパがないのではないかという発見のエッセイ「大日本スリッパ問題」では、スリッパをめぐって『はきもの世界史』、『おまるから始まる道具学』『春の数え方』『スリッパの法則 プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』などの本を、考察の流れの中で自然に紹介している。全体的に文化史絡みの本が多いが、スリッパに履き替える会社に投資しちゃだめだという本はビジネス書である。椎名誠の読書は実に幅広い。
しかし、これだけ本を知っていても知識をひけらかす厭らしさがまったくない。次々に関連本を挙げて見せるが、あ、今の面白かった?じゃあこんなネタもあるよ、という風に読者を楽しませる精神で書かれているから、楽しく読めるのだ。こういうホスピタリティの精神を持った書評家ってなかなかいない。
この本で紹介されていた本をさっそく7冊ほど購入した。椎名誠は岩波新書から読書案内本シリーズを、これを含めて4冊出ている。まだまだ買わされてしまいそうだ。
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