辺境遊記
バックパッカーとして気ままに旅するレイドバック感覚にどっぷり浸れる紀行文+肖像画+写真集。旅行先は世界と日本の辺境。キューバ、リオデジャネイロ、小笠原諸島、ツバル、カトマンズ、サハリン、大東諸島、ダラムサラ。
フリーライターとフリー絵描きがコンビを組んだ。ライターは現地の雰囲気と人々との会話を中心に旅の日々を書き、絵描きはボールペンで現地の人たちの肖像を描く。正しい事実を伝えようと言うのではなくて、ありのままを伝えようとする姿勢がいい。辺境からの世界認識は中央のそれとは違っている。
たとえばツバルの少年は自分たちの島が沈んでいるとは思っていない。昔からあんなかんじだという。もし沈んじゃったらどうするのか?と問えば、女の子が綺麗なニュージーランドに移住したいという。神に祈っているから大丈夫だと思うという大人もいる。実はツバルではゴミの不法投棄の方が深刻そうだなんていうことも知る。辺境で生まれて、生きて、死んでいく。画一的なグローバル志向の世界観と違って、ローカルな世界観は多様だ。
この本はビジュアルページが多いが、特にカラーボールペンで描いた肖像画が素晴らしい。人々の表情を見ているだけで人柄や生活ぶりが伝わってくる気がする。絵を描くのに40分から1時間半かかるそうだ。モデルになってもらうことを説得しなければならないし、柔らかくいい表情になってもらうためには、距離を詰める対話が必要だ。肖像画を描くという行為があったからこそ、現地の人たちの飾らない声がとれたのだろうと思う。著者の二人にヘンに問題意識がない、でも堕落しているわけでもない、という姿勢もよかった。
忙しくてなかなか旅行に行けないビジネスマンにおすすめ。私は毎晩寝る前に1章ずつ読んで、よい気分転換になりました。
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