グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命

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・グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命
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著者 藤井 清孝氏は、マッキンゼー出身でハーバードMBAを取得し、ケイデンス・デザイン・システムズ日本法人、SAPジャパン、ルイ・ヴィトン・ジャパンなど外資系企業の代表を歴任、現在は電気自動車の充電インフラ企業ベタープレイス・ジャパンの代表をつとめる人物。

「世界をみてきたからこそわかる、日本の本来的な強さ」をベースに日本の産業に必要なイノベーションを3つ(ビジネスモデル、ガバナンス、リーダーシップ)語る。

「近年、ものづくりのパラダイムが世界レベルで大転換してきている。これはデジタル化がビジネスのあらゆる側面に深く浸透してきていることに起因する。従来のハードウェア生産局面での付加価値が加速的に減少し、ソフトウェア、標準化、ユーザー・インタフェースなどを制した企業に富が集中し始めているのである。このような環境下では、個々の要素技術に強い日本企業が技術面を強調し過ぎることにより、一番苦しい技術開発部分を負担させられながら、その果実をアメリカやアジアに取られてしまう構図が加速する。」

DRAMメモリー、液晶パネル、DVDプレイヤー、太陽光電池、カーナビなど急速拡大した市場の日本企業のシェア推移を示したグラフが衝撃的だ。どの製品も日本が主導して開発して当初は高いシェアを誇っていたのに、20年間で急速に海外勢に「果実」を奪われている。

垂直統合型日本企業のお家芸「アナログ擦り合わせ」力だけではもはや生き残りは不可能なのだ。モジュール型製品の強みや国際分業による競争力など、グローバルレベルでの競争ルールにおける知恵が必要ということだと思う。

著者は、プロダクト・イノベーションからビジネスモデル・イノベーションへ向かうための必要な力を挙げている。

1 感動する「ユーザーエクスペリエンス」をつくる力
2 「オープン化」と「ブラックボックス化」のメリハリをつける力
3 指導権を取れるアライアンスを構築する力
4 もうかる仕組みを事前に設計する力
5 顧客からの信頼をブランド力に昇華する力
6 個別要素の強みをプラットフォームに構築する力
7 優秀な人材が馳せ参じる組織力

それぞれの項目で、自社の「ブラックボックス」でオープン環境を支配する、顧客満足ではなく顧客感動の追求する、ユーザーエクスペリエンスをブランド化する、サービスを製品化するなど、「日本はガラパゴス」と開き直る前に、まず把握しておくべき世界のルールと攻略法が示されている。

「7 優秀な人材が馳せ参じる組織力」では、野心エネルギーが活力の源泉となるという、世界では当たり前なのに、日本では、なかなか当たり前にならない話が書かれている。
「日本企業は終身雇用で優秀な人材を大量に採用し、育成してきた。結果として、事業を多角化させ、その担い手として人材も送り込む仕組みをつくり上げさせた。 だが、もっと大きな視点で見てみれば、これは大企業がさまざまな小さなビジネスまでも取り込んでしまっているということでもある。結果として、若者が起業しようとしても、どこかの大企業の子会社がもうやってしまっている、などというケースが極めて多い。大企業のコアビジネスから離れた事業への多角化は、新規参入者が起業するチャンスの芽を摘んでしまっており、結果的に産業全体の活性化を妨げているのである。 人材面でも、優秀な人材が大企業に抱え込まれてしまっている。本社の人材が関係会社へ「出向」という日本独自のシステムで、退路を断つことなくサラリーマンとして経営陣に入り、「疑似起業」をしている。このように、商機と人材の両方において、アントレプレナーがダイナミックに起業するという流れを弱めてしまっているのだ。」

日本でも、自営ベンチャー、オタクベンチャーの時代を脱して、いわゆるエリート層が自らダイナミックに起業したくなるような社会環境を整備すべきだ。それと「退路を断つ」って重要だなあと思う。

日本のテクノロジー産業をどう立て直すかのヒントがいっぱいのとても良い本だった。

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このページは、daiyaが2010年10月 9日 23:59に書いたブログ記事です。

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